2月号
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未来へつなぐ、鉄の記憶|けんびの『美』|Vol.3
未来へつなぐ、鉄の記憶
HAT神戸の臨海地域に建つ兵庫県立美術館は、南側から見ると、構造がよく分かります。鉄とガラスとコンクリートによる二棟が並び立ち、大きなひさしが張り出しています。企画展示棟のひさしの下を通り、4階(屋外)にある「風のデッキ」に上がると、北に六甲山系、南に瀬戸内海を望むことができます。
ここに新たに設置されたのが、彫刻家の青木野枝氏による《Offering/Hyogo》です。鉄(耐候性鋼)を用いた、全長11メートルを超える大きな作品です。2024年12月5日、合計20のパーツがトラックで到着し、翌6日から約10日かけて、設置作業が行われました。3階から4階に上げるために、特設のスロープも用意。作者の青木氏をはじめ、多くの方々の尽力によって、無事に完成しました。
タイトルのOfferingは「捧げるもの」の意。阪神・淡路大震災から30年のメモリアルとして構想された、当館でもっとも新しい所蔵品です。震災により失われた命、風景、時間、その他のあらゆるものへ思いを捧げ、30年前のあの日を記憶に刻む、という願いが込められています。公益財団法人伊藤文化財団から寄贈を受け、2025年1月10日、お披露目の式典が行われました。HAT神戸一帯は製鉄工場の跡地で、鉄の記憶を継承する作品でもあります。屹立するガラスに挟まれ、軽やかに連なる3つの球は、過去、現在、未来のつながりにも見えてきます。
(学芸員・鈴木 慈子)
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青木野枝《Offering / Hyogo》2025年 鉄
287×302×1150cm
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山側から海側を見たところ
陽光によって色の見え方や影の出方が変化します
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北風の吹きつける寒い中、連日、溶接が行われました
常設展示室で開催中(~2025年4月6日まで)のコレクション展では、《Offering/Hyogo》のメイキング映像や関連作品も合わせて展示しています
・美術館北よりエレベーターで3階へ→ANDO GALLERY横を通って海側の南庇下へ進み、西に少し行くと階段がありますので4階へ。
・美術館エントランスから円形階段をのぼって2階へ→ANDO GALLERYに入って上層階から北へ→
ANDO GALLERY横を通って海側の南庇下へ進み、西に行くと階段がありますので4階へ。
※途中まで「青りんご」経路と同じです。
兵庫県立美術館
HYOGO PREFECTURAL MUSEUM OF ART
■神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1■TEL.078-262-1011
■休館日:月曜(祝日・振休の場合は翌日)
■開館時間:10:00-18:00
(展示室への入室は17:30まで)