1月号
出会いと学びの旅から Vol.01
1冊の本との出会いは偶然なのか?
人の一生は出会いの連続です。出会いというのは、出産による母親との出会いから始まって、さまざまな人との出会いがあり、動物や自然、文化や芸術、宗教との出会いもあれば、喜びや悲しみ、悩みや苦しみ、事故や、災害、病気、障がい、そして最期に死との出会いがあります。そうした出会いというのは運命的なものでもあり、コンピューターでは予測のできないものです。
私は学生の頃、書店で矢内原忠雄先生(元東京大学の総長。内村鑑三の無教会派のクリスチャン)の著書「教育と人間」という本に出会いその本がきっかけとなって福祉の仕事に就くようになりました。もし、その本との出会いがなければ、私は今の仕事に就いていなかったでしょうし、また今の家族との出会いもなかったことでしょう。
その本に出会ったのは偶然だったのか、それとも私を福祉の仕事に就かせるための必然的な出会いだったのか、を時々考えることがあります。
もし私が20世紀の日本でなく、16世紀のアメリカに生まれていたら、18世紀のアフリカに生まれていたら、日本でも、縄文時代に生まれていたら、平安時代か戦国時代に生まれていたら、私の人生は想像もできないようなものであったことでしょう。そんな風に考えると、今のこの時代の日本に生まれてきたことは自分では選択できない運命とか、宿命と言ったものなのかもしれません。
先ほど書いた著書の中で矢内原先生は「人間の一生は誰にとっても1回きりしかない。その1回きりしかない人生をどのように使うべきか」をクリスチャンの立場から記述しておられました。当時、卒業後の職業の選択や将来の生き方について迷っていた私はその本を読んで先生の考え方に共感するところがあり、企業への就職をやめて、ボランティアの若い学生たちと共に神戸に小さな子どもの施設を建設する事になりました。それが私と福祉の仕事との最初の出会いでした。
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