4月号
KOBECCOオススメ 〜CINEMA〜
目の見えない白鳥さん、アートを見にいく
アートを前に、わたしたちは何を見ているのか
ノンフィクション作家、川内有緒さんの「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を読むと、川内さんが全盲の美術鑑賞者、白鳥建二さんと出会い、初めて言葉を使った鑑賞を体験したときの発見や驚きが伝わってくる。その川内さんが共同監督を務める本作は、白鳥さん自身の日常生活、白鳥さんが実施しているアート鑑賞の場作りや、人生観を浮き彫りにするインタビューなどを通し、その人物像や大事にしていることを朗らかに映し出す。同時に、アートを前にして、わたしたちは一体何を見ているのか、本当は何も見えていないのではないかと、様々な問いが頭の中をこだまするのだ。
白鳥さんは写真家の顔もあり、デジカメを片手に日々散歩しながら、自分で見返すことのない写真を撮り続けている。ただ好きだから、そこに意味を求めない。そんな白鳥さんを見ていると、心がフラットになるのはわたしだけではないだろう。
text.江口由美
『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』
(2022年 日本 107分)
監督:三好大輔、川内有緒
出演:白鳥建二、佐藤麻衣子、川内有緒、
森山純子、ホシノマサハル、岡部兼芳
製作・配給:アルプスピクチャーズ
元町映画館にて4月22日(土)より2週間上映。
上映スケジュールはコチラ▼
https://www.motoei.com/
© ALPS PICTURES INC.
午前4時にパリの夜は明ける
はじまりは眠れぬ夜のラジオ番組
フランスの女優は“大人”になるほど魅力が増すと思う。若い頃から輝く存在だったシャルロット・ゲンズブール、エマニュエル・べアールも同じく。2人の名前が並ぶこの作品の舞台は1980年代のパリ。活気ある映画館、洒落た音楽とファッション。芸術と自由にあふれた街に生きる大人の女性の物語。これはもう観ずにはいられない。
シャルロット演じるエリザベートは“普通の主婦”。子どもは優等生とはいえず少々問題あり、夫は心離れて家を出てしまう。家族の幸せを優先してきた主婦には辛いこの状況、先日アカデミー賞を受賞した“エブエブ”の主人公エヴリンのおかれた状況と似ている。経済的余裕も華やかな出来事も美貌もない主婦の毎日。それが崩れた時、2人は闘う。エリザベートは静かに、エヴリンは激しく。“普通”を守ってきた時間は人の強さとなり、街の豊かさは人の心を救う。
text.田中奈都子
『午前4時にパリの夜は明ける』(2022年 フランス 111分 R15+)
原題:LES PASSAGERS DE LA NUIT
監督・脚本:ミカエル・アース
出演:シャルロット・ゲンズブール、キト・レイヨン=リシュテル、ノエ・アビタ、
メーガン・ノータム、エマニュエル・ベアール
配給:ビターズ・エンド
シネ・リーブル神戸にて4月21日(金)公開。
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https://ttcg.jp/cinelibre_kobe/
© 2021 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA