2023年
4月号
4月号
竹中大工道具館 叡智の彼方へ|第七回|日・中大工道具の違い
紫禁城太和殿斗栱構造模型
日本の大工道具の源流は中国にあります。しかし日本の職人たちは、中国から入ってきた道具を自分たちが使いやすいように改造して使ってきたため、今日ではカタチや使い方に大きな違いがあります。日本の鋸や鉋は引く時に木材が切れる「引き使い」です。一方、中国は押す時に木材が切れる「押し使い」です。これは主に使う「木の堅さ」の違いと、「精度と効率」に関する考え方の違いが使い方に現れてきたものと考えられます。常設展「世界を巡る」コーナーの導入部では、その違いを映像と硬さの異なる三種類の木のハンズオンで紹介しています。
続く中国コーナーでは中国の中心・紫禁城の中にある太和殿の斗栱構造模型と首都・北京の大工道具を展示しています。太和殿は皇帝の即位式などが行われる重要な建物で、中国最大の木造建築です。実際の建物では、豪華な色彩に目を奪われますが、この模型の木組みをみると、細く短い材を組み合わせて、巧みに大きな構造体をつくりあげていることがわかります。中国では早くから大径木が欠乏したため、短く小さな材でシステマチックに建築をつくる技術が発達しました。この太和殿斗栱構造模型は、中国の建築生産の合理化が完成の域に達していることを示す典型的な例です。木材が豊富な日本は、ある段階から刻みの精度、仕上げの美しさにこだわるようになりますが、中国は材木の表面を塗装し、合理化、システム化の道を歩んできたといえるでしょう。その違いが道具のカタチや使い方にも現れています。
(学芸員・崔ゴウン)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/