12月号
ひょうごの「原点」が リアルにバーチャルに甦る 初代県庁館がオープン
11月3日、中央市場近くに初代県庁館がオープンした。
兵庫県の名前のルーツは江戸時代に廻船で栄えた湊、兵庫津にある。幕末、天領だったここを、かつての兵庫城の場所で現在のイオンモール神戸南の北西あたりにあった兵庫勤番所が治めていたが、1868年に兵庫県ができるとこの勤番所を県庁舎に転用、初代知事の伊藤博文(俊介)が執務をおこなった。しかし、手狭であったことから9月に移転、その後は学校として活用されたが兵庫運河開削時に解体された。
運用わずか4か月のこの〝幻の県庁舎〟を、今回、古い図面や絵図をもとに県産木材と淡路瓦を使って復元、一歩入るだけで幕末動乱の時代の空気が甦るような歴史空間が広がって、見どころも多い。庭は資料がないため当時のオーソドックスな日本庭園を再現しているが、縁側でひなたぼっこしながら眺めると気分上々。執務室には西洋の机やテーブルが置かれて和洋折衷、その先には湯殿や憚りまで丁寧に造られていて、お白州があるのも面白い。コスプレイヤーにウケそうだし、時代劇のロケにも使えそう。
しかし、建物を再現しただけではない。なんと、MR(複合現実)技術でバーチャル歴史ツアーが体験(しかも無料)でき、スマホで伊藤博文らと記念撮影もできる。そのあたりは敢えてネタを明かさないので、ぜひ現地で体験してほしい。また、建築自体も最新の技術を駆使し、木造に見えるが実は鉄骨を構造材の材木に仕込んでいる特殊な工法で、空調やコンセントも目立たないように工夫し、一見したところ全くもって昔の建物だ。
名誉館長は〝神戸のヒストリアン〟こと田辺眞人先生。コミュニティスペースとしても活用され、併設の旧同心屋敷は貸室に、取次役所は休憩スペースになっていて気軽に利用でき、イベントも企画されるそうだ。来年度には隣にひょうごはじまり館ができ、兵庫津ミュージアムがグランドオープンする予定。
近くには清盛塚や兵庫大仏など見どころも多いので、散策がてらに訪ねてみよう。
■開館時間 9時~17時(4~9月は~18時)最終入館は30分前
■休館日 月曜(祝日の場合翌日)・12月31日・1月1日
■神戸市兵庫区中之島2-1-17
■地下鉄海岸線中央市場前駅下車 徒歩約5分
■TEL/078-651-1868
https://hyogo-no-tsu.jp/