11月号
KOBE豚饅サミット®開催第10回記念対談「サミットの10年、発起人達の10年」
2011年11月11日11時11分、ブヒブヒと“11”が並ぶ日にスタートした「KOBE豚饅サミット®」。「老祥記」「四興樓」
「三宮一貫樓」の3店舗が発起人となり、「神戸発祥の豚饅を通して神戸と日本を元気にしたい」と続けてきた同イベントが今年開催10回目を迎える。3人の発起人の熱き思いをギュッと詰め込んだ、カロリーの高い対談をお届けします。
商売敵の豚まん店が一堂に集まる!?
第一回KOBE豚饅サミット(以下サミット)開催の経緯から。発案者の安藤さんがこのイベントを思いつかれたのは?
安藤 2010年の年末、とある経済予測を目にしたんです。翌年から大阪の百貨店の改装や増床が相次ぎ、大阪と神戸で買物をしていた阪神間のお客様が大阪に流れてしまうという、神戸にとって先行きの暗い見通しでした。同じ頃、大阪から、終電で三宮へ帰る機会がありました。金曜深夜、賑わっていた大阪と打って変わって神戸は閑散としている。何とかしなければと思いました。自分独りでできることは限られているが、豚まん店同士が協力しあえば、神戸の活気を取り戻す一助となれるかもと、まずは豚まん発祥店、老祥記の曹社長に相談させてもらうことに。ただ商売敵ですし、断られても仕方がないと緊張はしていましたね。
曹 安藤常務から「元気のない神戸を神戸発祥の豚饅で活気づける」という案を聞き、面白いと思いました。すぐに葉社長に声をかけ、3人で集まりました。
葉 私も二つ返事で承諾しました。それまで私どもは自分の店でしか商売をしてこなかったこともあり、他店と一緒にするイベントに魅力を感じたからです。ライバル店云々は全く気にしなかったですね。それぞれが老舗で何代にも渡り家族ぐるみで通い続けてくださるお客様も確立していましたし、他店のことは考えずにやってきていますからね。
曹 僕も商売敵という意識は皆無、豚まんで何かやりたいと考えていたし、よくぞ提案してくれた!と喜びました。春節祭やジャズピクニックなど、南京町の色々なイベントで培ってきたノウハウを、自分が携わる“豚まん”の土俵で発揮できる良い機会になる。そうして豚の鼻の形に似た“11”が並ぶ「2011年11月11日」に第一回目を開催することが決まりました。
キーコンセプトは日本の元気を神戸から
「日本の元気を神戸から!」を掲げられています。
安藤 11月に向けて計画を進めるなか、3月11日に東日本大震災が発生したんです。それで事業で得た収益を被災地に届けたいという話が湧き上がってきました。阪神・淡路大震災から16年、未曾有の災害からここまで元気になれたのはすごいことなのだから、『日本の元気を神戸から!』というコンセプトにしようと。第一回が終了後、その売上を原資に、翌年の1月17日に宮城県名取市に炊き出しに遠征しました。以来毎回、収益の一部を被災地復興支援に充ててもらっています。仙台の「桂雀花」さんや熊本の「山水亭」さんなど、被災地で出会ったお店のサミット出店など、同志も増えていきました。
曹 サミットをきっかけに絆が生まれ、被災地で逆に勇気づけられたり、支援の勉強をさせてもらったり、活動から得たものは大きいですね。サミットは市や県の助成金には一切頼らず、主催店が自費で開催しています。助成金をもらって被災地支援というのも矛盾しますから。僕は商売人として行うイベントは自力のお金で行うことが理想と考えていて、それは三人の共通認識です。サミットの目的は目先の売上ではなく、お客さんに喜んでもらい、豚まんを通じて神戸から日本を元気にすること。10回続けてきてブレはありませんし、商売人としてのプライドもあります。
人や食材と未知との遭遇その裏での苦労も楽しい
…10年を振り返って、記憶に残る思い出は?
葉 毎年、発起人3店舗各々が「オリジナル創作豚まん」を考案します。うちは1回目に「我々中国人の家庭料理を入れよう」と父の好物の牛のアキレス腱を具材に選んだものの、汁で手がベタベタしてしまうことに悪戦苦闘。思い描く味にたどりつけないんです。試行錯誤してようやく完成しました。サミットが終了すると、もう来年について悩み始めます。テレビの料理番組で知った珍しい食材を取り寄せるなど、色々工夫してきましたね。
曹 創作豚まんは話題性も抜群です。うちは神戸の一流シェフとのコラボ豚まんで、とにかく大変な労力を要しますから、真剣に取り組んでもらえるシェフの人柄を見込んでお願いします。『ルセット』の依田さんや『コム・シノワ』の荘司さん、『伊藤グリル』の伊藤さん、『近藤亭きっしゅや』の近藤さんほか、フレンチやイタリアン、洋食店などと組んで国際都市神戸ならではの豚まんを販売し、神戸の食文化にも貢献できたと自負しています。
安藤 初回から私の母校・甲南大学の西村順二ゼミにも参加してもらっています。「豚饅娘コンテスト」など、学生さんからユニークな案をもらって、おじさん達は(笑)、取りまとめに苦労しながら楽しい企画を実現してきました。
挑戦の10回目開催皆の男気もみてほしい
…第10回の見どころは?
葉 南京町広場でのオリジナル豚饅の販売は「発起人3個セット」「10周年記念セット」をはじめ、窓口を絞った販売を予定しています。南京町の三密を避けてサーキット型の「豚饅サミットウィーク」も同時開催。感染拡大防止対策に万全を期して、皆さんに安心して楽しんでいただけるようにしたいです。
曹 今回も3店舗の創作豚まんには気合が入っていますよ。原価が高すぎて売るほどに赤字となる(笑)、一期一会の代物です。また豚パンなど、他ジャンルの参加店舗で豚まんをイメージするメニューも販売。サミットが発火点になって色々な店でチャレンジしてくださった新メニューが生まれていることが嬉しいですね。
安藤 慎重に考え、やると決めた以上、最高のものにしたいです。培った関係性を大切に、コロナ禍の大変な時期に決意してくださった、男気あるお店の本物の豚まんが楽しめると思います。
…最後に10回にかける意気込みを。
葉 参画いただく出店業者さんをはじめ、色々な応援や協賛・協力があり、第10回を素晴らしい形で迎えることができました。ぜひ来年、そして今後に繋がるよう頑張りたいです。
安藤 11月11日開催ゆえ、メモリアルな第11回に全力投球できるよう、前向きなウォーミングアップ回になればいいなと考えています。
曹 サミットのプロデューサーとしてお世話になった今井芳男さんが今年亡くなられました。神戸のイベントの数々を手掛けてきた彼がいなければ、このサミットもこれほど完成された内容にならなかったでしょうし、追悼の意を込めて、彼の素晴らしいイベント文化を表現したいと思います。行政指導に従って安心開催に努めますので、ぜひおこしください。