2月号
若い力で、神戸のまちに革新的な新時代を
一般社団法人神戸青年会議所(以下神戸JC)第63代理事長に就任した野々村充教さんをお迎えし、本年度の活動方針についてお話をうかがいました。まったく新しい生活様式を選択せざるをえなくなった世の中で、神戸JCの役割とは。
「イノベーション」をテーマに
―昨年は、新型コロナウィルスの流行によって生活が一変し、JCの活動にもかなりの影響があったのでは。
毎年夏に開催されます「Kobe Love Port・みなとまつり」をはじめとする行事が中止になりましたし、例会が開催できなかったり、メンバー間の交流が目的のひとつでもあるJCの活動に多くの影響を及ぼしました。しかしながら、集まれない状況であっても工夫を凝らし、例会をミーティングアプリ「Zoom」を使ってウェブ上で行い、メンバー間だけでなく海外のメンバーとも交流することができました。また、脳科学者の茂木健一郎先生に講師としてお越しいただき、Zoomで一般の方にも例会に参加してもらうことで、神戸JCの活動を広くPRすることができたと思います。ただ、コロナによってダメージを受けられた飲食業界や観光業界などのメンバーが休会を余儀なくされるなど残念なこともありました。
―そういった中で、本年度の理事長基本方針を『Innovator革新的な新時代を』をテーマにされました。
まず取り組まなくてはならないと思っているのは、やはりコロナ禍で疲弊している経済と社会の再建ということです。緊急事態宣言の発令によって、人々が集まることや営業自体がまったくできなくなるという、これまで経験したことがなかったことが起こりました。このような状況下では、今までのやり方を踏襲しても再建は無理だと思います。何か革新的なもの、新しいものを創造しなくてはいけないのではないかと思います。
私の考えですが、新しいものといいましても、まったくのゼロから生まれてくるものというのは少ないのではないかと思います。例えばスマホは携帯電話とインターネットが合体したものといえますし、自動車は昔の馬車にエンジンがくっついたものともいえます。今あるものの中から、新たな目線で新しい使い方をすることで、新たな価値をもたせるというのが「イノベーション」なのではないかと考えています。またそういった事業を行うことによって、経済と社会が共に発展するための事業を展開していきます。
―神戸JC組織内にも、革新を多く取り入れているそうですね。
今年度、メンバー向けに力を入れたいのは会員研修です。先輩方の姿を見て学ぶ、というだけでなく、座学の研修などで学べる仕組みなども必要ですし、メンバー自体の資質が向上すれば、今後の活動にも広がりが出るのではないかと期待しています。また、JCはメンバー同士が対面でコミュニケーションをとり、交流を深められるというのが魅力でしたが、コロナ禍においてそれができなくなり、メンバー同士で集う楽しみもなくなってしまいました。するとメンバーの中には「JCなんかもう行かなくてもいいんじゃないか」と、メリットを感じなくなったという人も出てくるかもしれません。神戸JCも社会環境に合わせて新たな組織に変化していく必要があります。その一例がZoomを使った例会です。今までの例会ですと、必ずその日に神戸にいて、会場に集まらなくてはならなかったのですが、ウェブ上なら出張先でも参加できるため、何処にいても神戸JCの活動に参加できるということもいえます。また、神戸は長崎JC、横浜JC、徳島JCと友好締結を結んでおり、ハワイのホノルル日系人JC、シンガポール・シティJC、高雄JCなどとも交流があります。今までは、彼らとは年に一回程度の交流で終わっていましたが、ウェブ上での交流が可能となればもっと機会を増やし、情報交換などを行うことでお互いに良い刺激が生まれるのではないかとも思っています。そういう意味で、いろいろな面でメリットも多く生まれてくるのではないかと、今回の事態を前向きにとらえています。この環境に合わせて変化していくことが、メンバーにとってJCの価値観を高めていくことにもなると考えています。
ジェンダー問題にも積極的に
―基本方針において、すべての人々が活躍できる社会に向けた、いわゆるジェンダー問題についての取り組みが盛り込まれました。
本年度、総活躍社会構築特別委員会を新たに新設し、神戸JCとしても総活躍社会に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。私は昨年、日本JCに出向し、総活躍社会確立委員会を担当いたしましたが、その時に強く感じたのは、世の中では活躍しているといえる人はほんの一部で、ひきこもりの方も多いですし、障がいがあって思うように働けない方や、家庭に入らざるを得ない女性など、いろいろな方がおられるということです。超高齢化社会を迎え、労働者人口が減少する中で、まだ活躍できていない方々にも活躍していただけるようにしなければ、税収も減り、すべての事にひずみが大きくなってしまうでしょう。
ジェンダー問題に関しては、女性の問題ととらわれがちですが、そうではありません。残念ながら、30代~40代の中年層の男性の自殺が多くなっています。これは、男らしさとか女らしさといったこと、例えば「男性なんだから稼いで当たり前」といった考えや言われ方も問題のひとつにもなっています。こういう考えがジェンダー問題ですが、そこを理解して、改善していかなくてはいけません。具体的な例としては、昨年度から取り組んでいる男性の育児休暇取得の推進です。男性が育児の大変さを知ることで、女性に対する理解が深まり、またそれによって女性の社会復帰が早くなるということもありえます。女性がもっと社会で活躍できれば、より経済効果が期待できますし、女性目線が増えれば世の中はもっと良くなるでしょう。ジェンダー・ギャップ指数については世界的に見ても日本は遅れていて、男女格差がまだ大きく、世界標準まで改善することが必要だと考えますので、昨年度に引き続き、2021年度も力を入れていきたい活動です。神戸JCのメンバーには企業の経営者も多いので、神戸JCが取り組むことでメンバーそれぞれの会社にも良い影響を与え、社会が変わっていくのではないかと期待しています。
―野々村さんご自身はどういった経緯で神戸JCに入会されたのですか。
ウオクニ(株)二代目社長である父も神戸JCに入っていたので、JCは生まれた頃から身近な存在でした。ただ中学・高校は埼玉で寮生活の学校に入り、大学は近畿大学でしたので神戸とのつながりがあまりなく、父から「JCに入会すれば友達ができるぞ」と言われて29歳のとき入会しました。当時の私自身は学生の延長線上でしたから、先輩方の考え方や習慣、行動がとても大人に見えたのが印象的でした。昨年度は、日本JCに出向させていただきました。今年度神戸JC理事長のお声掛けをいただいたときに、日本JCでの経験を活かせるのではないかと思いましたし、私自身、先輩や当時の委員会メンバーに支えられてここまで来ましたので、なんとか恩返しができるように尽力したいと理事長をお引受けしました。
―現在神戸JCのメンバーは約220名とのことですが、JCの魅力とはどんなところにあるのでしょう。同じ世代の方々にメッセージがございましたらお願いいたします。
第一はいつも通りの毎日ではなく、新しい一日がほしいという方にはぜひご入会いただきたいと思います。特にこれは私自身が強く感じたことですが、会社の二代目・三代目の方々にお伝えしたいのは、私たちのような立場の人間は、会社内では正直いって誰からも叱ってもらえない、「これがあなたの足りないところだ」と注意されるようなこともなかなかない。しかしJCでは、メンバーがお互い対等な立場である中で、支え合ったり切磋琢磨したりする場面が多く、社会人としての一からがすべて学べる場、という気がするんです。
もちろん、神戸のまちのために何かしたいと考えている熱い想いがある方に来てほしいということは大いにありますが、自分自身に学びの場がほしいとか、何か経験がほしい、人とのつながりがほしいという方は、ぜひご入会いただきたいと思います。
一般社団法人神戸青年会議所
第63代理事長 野々村 充教 さん
1983年生まれ。ウオクニ株式会社 代表取締役社長。近畿大学卒。2013年神戸青年会議所入会。2019年神戸青年会議所副理事長、日本青年会議所社会ビジョン確立委員会委員。2021年神戸青年会議所理事長