2月号
神戸北野の歴史的建造物を舞台に
「料亭 松廼家」オープン!
花隈で1917年に創業し、歴代各界の著名人が訪れ神戸料亭文化の中心を担ってきた「料亭 松廼家」が2020年12月、北野の歴史的建造物を舞台に復活した。「料亭文化をはじめ、日本文化に興味を持つきっかけづくりをしたい」という4代目女将・鵜殿麻里絵さんにお話を伺った。
―街中にありながらタイムスリップしたような空間ですね。
1907年に竣工したこの建物は、今の景色の中では異質な感覚があるかもしれませんね。でも、松廼家に生まれ育ち、数寄屋造りの建物に慣れ親しんできた私には「懐かしい」と思える空間です。
―花隈の松廼家には長い歴史がありましたね。
はい。私にとってもたくさんの思い出が詰まっていました。震災で全壊した屋敷の光景を目の当たりにし、その後の経緯を目にしてきた私は「料亭として松廼家を復活させたい」という思いを心のどこかに持ち続けていました。
―この歴史的建造物での復活に至った経緯は。
この建物はJR西日本さんが所有され、ゲストハウスとして利用されていたものです。一昨年の秋にご縁があり、このゲストハウスの存在を知りました。お庭の紅葉がすごく奇麗な時期でした。その時、不思議な懐かしさに、「ここだ!」というインスピレーションが湧きました。それ以来、私はこの建物のことが忘れられずにいました。そして昨年、私どもと長くお付き合いいただいているJR西日本さんからも「神戸市の歴史的建造物でありながら十分に活用できていない。もっと多くの人に見ていただきたいと思っている」とお聞きし、「文化事業としてご一緒させていただけませんか」と提案し、4月、コロナ緊急事態宣言発令直後に企画書を提出させていただきました。
―すごい行動力ですね!「文化事業として」というのは。
かつて花隈には花柳界があり、たくさんの料亭があり、各界の著名人たちが訪れました。そんな「料亭文化」を今の社会で復活させるということには、周りから猛反対を受けました。でも私は単に料亭文化ということではなく、松廼家が辿ってきた歴史を基に神戸の文化を感じていただき、兵庫県内、広く日本の文化を、地元の皆さんをはじめ観光に来られる方にも知っていただくきっかけにしたいという思いを持っています。
―具体的には。
第一弾は淡路島の人形浄瑠璃を披露していただき、臨場感溢れる舞台にすごく好評をいただきました。そこで終わるのではなく、次は実際に淡路島まで行って見てみようと思うきっかけになり、ひいては観光につなげるところを最終的な着地点に定めています。
―お料理も楽しみです。どういうコンセプトですか。
旬の地元食材を使い「ひょうご五国」を感じていただこうというコンセプトは今まで通り基本にして、松廼家の長い歴史の中にはなかったフレンチのテイストをランチにさりげなく取り入れています。夜は本格的な懐石コースを提供させていただきます。
―松廼家ならではの料亭文化とは。
私どもの料亭文化は直系女性4代で引き継がれてきました。お客さまに「また戻って来たい」と思っていただける環境づくりを大切にしました。お料理をはじめ場所や調度品、設えなどを通して、女性ならではの「おもてなし」がほかにはない大きな特徴だと思っています。
―今後については。
松廼家を続けるのかどうかというのではなく、文化事業としてどう続けていくかをJR西日本さんと協力して実証実験しています。今後もお庭の四季折々の風情を生かしながら、例えば伝統楽器演奏や落語、朗読などを組み合わせる企画などを候補として挙げています。日本文化発信の拠点としてこれからの「松廼家」に注目していただけたら幸いです。
松廼家
神戸市中央区北野町4-2-5
JR西日本三宮ゲストハウス内
TEL.078-862-6077
11:00~15:00
17:00~22:00
定休日:月曜
http://msbranding.jp/matsunoya/