2月号
Street Table 三ノ宮
〜みんなが自分のものと思える都心に〜
「Street Table 三ノ宮」に込められた思い
―Street Table 三ノ宮が始まりました。まずは率直なご感想を。
私どもLCI(一般社団法人リバブルシティイニシアティブ)が行ってきた実績を多くの方々に評価いただき、小さな一般社団法人に、こんな一等地で活動するチャンスを与えてくださったのは、ありがたいと思いましたね。飲食やライブハウスの方など、コロナ禍で苦しんでいる人も一緒に、みんなで神戸の街を盛り上げようと企画をしましたが、感染防止はもちろん制約が多い中、わからないことだらけ。正直大変でした。
市役所南側の都市公園、東遊園地の社会実験「アーバンピクニック」などを経験してきましたが、三ノ宮の駅前となると勝手が違います。東遊園地は公園ですから、人がくつろぐための公園でもっとくつろげて気持ち良くなってもらえる仕掛け作りです。駅は、用事があって来られている人に「立ち止まりたい」「ここにいたい」と思ってもらえる空間を作るわけで、公園とは全く違いました。
駅前のような人の多い場所では、誰にでも開かれた空間を作ろうとしがちですが、居心地が良くならない場合が多いと思うんです。公園や海辺のような物理的に気持ちのいい場所なら別ですが、駅前のアスファルトがむき出しの場所に「人工芝を敷いてフリースペースにしたからみんな来てください」と言っても、そこで何をしたらいいのかわからないじゃないですか。だから、親しみを感じてくれる人を、具体的に増やしていけるようにと考えました。
―いろんな人が参加して出来上がったと聞いていますが。
都心の駅前に、市民が直接関わっている場所って、あまりありませんよね。三宮の100年に一度の大改造には、そんな場所が必要だと思ったんです。市民が関わる余地が多少でもないと、他人事になるんです。バスターミナルや駅ビルなどの大規模開発の報道を見ても、どこか他人事じゃないですか。親しみを持つってことが、ものすごく大事なことなのです。
駅前開発が完成した後も、クロススクエア空間で市民参加の場作りがあるでしょう。突然言われてやるよりも、いろんな人が関わってきた場所があった方がいい。そのための準備運動だと思っています。例えば、イスやテーブルはいろんな人に、もらってきたり借りたりしています。廃校になった小学校の理科室から、実験用のテーブルも持ってきました。プロの手を借りながらですが、いろんな立場の人と木を切り、ヤスリで削って、会場を作っています。ちょっとでも関わってもらえれば、関心を深めてもらえるはずですから。
今回、フードスタンドが8台あるのですが、事務局側で全て設計することもできましたが、神戸大学や神戸芸術工科大学の学生チーム、自分で手を動かすことが得意な設計者たちなど、8組の方々にお願いし、作ってもらいました。8組の方は確実に、自分が作ったものとして親しみをもってくれていると思います。飲食もどこか1店舗にお任せするのではなく、地元の8店舗の方々が寒い中で頑張ってくださることを通して、自分の場所だと思ってくれているはずです。ここで飲食営業することで、お店のファンを獲得できればいいなと思っています。
―「神戸モトマチ大学」での活動もですが、村上さんの精力的な活動の源は何でしょうか。
「神戸モトマチ大学」は、阪神・淡路大震災、東日本大震災を経験して、神戸のまちのために何かをしたいと始めました。小さな都市でも意欲的にチャレンジする人同士が「トモダチのトモダチ」感覚でつながっていけば、まちのもつチカラを最大限に引き出すことができると信じて、いろんな人を講師に招いて学びの場を作っています。
私の活動の原点は「打順が回ってきているのに、断ったら後悔する」という思いです。自費を費やしている部分もありますが、まだ生活に困るほどお金はなくなっていないし、仕事もそこそこ順調。家族に病人もなく、介護する人もいない。自分自身も健康で、仕事に一所懸命になれるタイミングです。世の中、やりたくてもできない人が多いなか、打席に立てるってことは幸せじゃないですか。
グランドオープンは三月。ステージに立ちたいと思える場所に
―三月から第二期と位置づけているそうですが。
見た目は、ステージに屋根ができるくらいですが、三月春分くらいになれば夜も楽しもうという気分が出てくると思っているんです。新型コロナウィルスの状況も考慮しながらになりますが、グランドオープン的に捉えています。
ステージもダンスとか学生のコーラスグループとか、いろんな人に使ってもらいたいので、募集活動をするつもりです。第一期で、使い方やイメージ作りをおこない、アマチュアの方に「あのステージに立ちたい」と思ってもらえるようにしておきたいですね。飲食の店舗構成もどんどん変わっていく予定です。
―Street Table 三ノ宮が終了する9月以降、どのような神戸であってほしいと思いますか?
市民が関わる余地のある駅前であって欲しいと思います。食べたり買ったりする関わり方はもちろんですが、自分自身がそこで何かをしかける側に回ったり、自分の場所と思えるようになればいいですね。
情報を一方的に受け取っていた時代から、自由に発信できる時代になりました。リアルの場でも自由にやりたいことをやれる、人や場所が増えてくるんじゃないでしょうか。Street Table 三ノ宮は、そのための種まきと思っています。楽しみです。
一般社団法人リバブルシティイニシアティブ代表 村上豪英さん
株式会社村上工務店 代表取締役社長。2011年6月に「神戸モトマチ大学」をスタート。2015年6月からは、神戸東遊園地の社会実験「アーバンピクニック」の事務局長を務める。住みやすい町(リバブルシティ)をめざす実践のみならず、知識の集約や情報の発信、交流など幅広く活動。