2021年
1月号
1月号
まずは親が〝上機嫌〟でいること。 そしたら、親子はうまくいく。|内田 樹 さんインタビュー
イクメン時代に先駆けること30年余前――。一人娘のるんさんと、父子二人暮らしを始めた内田樹さん。この度、るんさんとの往復書簡『街場の親子論』を出版された。〝父〟内田さんが、多くの戸惑いのなかで、大切にしていたという子育ての〝信条〟とは、なんだったのでしょう。
突如、シングルファーザーに。
「えらいことになったぞ!」
−在宅勤務の増加で、子どもと改めて向き合うことになったお父さんが多いようです。
内田さんが子育てされていたころは、父子家庭は珍しかったのではないでしょうか。
89年頃ですから、周りにはいなかったですね。でも、二人で暮らし始める前から子育てには深く関わっていたんです。保育園の送迎とか、イベントにもフル参加だったし。卒園式の謝辞までやって、「父親が保護者代表なんて園始まって以来だ」って言われたくらい(笑)。
−お父さんと暮らすことは、るんさんが決められたそうですね。
びっくりでした。ぼくを選ぶことは絶対にないと思っていたので。毎日のように、この子と離れたらどうやってその心の風穴に耐えられるかばかりを考えていましたから。
でもそれからは、「さあ、大変なことになるぞ」と腹をくくって、一気に頭を切り替えました。仕事で出世とか成功することは求めないと決めたんです。
神戸女学院大学 名誉教授
内田 樹
1950(昭和25)年、東京生まれ。神戸女学院大学名誉教授。武道家、多田塾甲南合気会師範。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」主宰。