1月号
新春インタビュー 伊藤博文公が愛した 日本人初のテーラー 柴田音吉洋服店 起業200年に 向けての 新たな挑戦
「柴田音吉洋服店」は2018年、起業150年という節目の年を迎えた。以来、大きく変わりつつある社会状況をいち早く捉え、ニーズに応えながら伝統を守ることも忘れず、起業200年に向け新たな挑戦を始めている。テーマに掲げている「温故知新」の意図と今後の展開について、5代目店主の三代・柴田音吉さんにお聞きした。
古きを守り、時代に即した
新しさを取り入れる「温故知新」
―WEB戦略と新たな挑戦とは。
昨今はWEBでのお問い合わせを全国から頂くケースも非常に多くなり、昨年9月にはホームページをリニューアルしました。スタイル写真を多く取り入れ、スマホからもより見やすいページに改善したところ、設定したキーワードがGoogle検索でトップページに上がり、今までのシニアのお得意様に加え40代、50代の若い方の「ハンドメイドのフル・オーダーで仕立てるスーツ」への関心がさらに高まってきているようです。そこで新たに「温故知新」をテーマに新しいチャレンジを始めています。
―その意図は。
伝統的英国調で風格のあるエレガントなデザイン「ロイヤル・ブリティッシュ・スタイル」(温故)、モダンでスタイリッシュなデザイン「モダン・ブリティッシュ・スタイル」とイタリアミラノで好まれているファッショナブルなデザイン「イタリアン・トレンド・スタイル」(知新)。当店伝統のスタイルを守りつつ(温故)、軸足をモダンとトレンドへとシフトしながら(知新)、いずれも特許庁よりブランドとして登録商標され、製造方法で実用新案登録されている「ライト・コンフォート」「ライト・フィット」仕立てを中心に展開していこうとしています。
―次の時代を支えるスタッフの体制も整いましたね。
当社を半世紀以上にわたり支え続けてきたテーラーの世界コンクールで認められた工場長の技術を継承する若いスタッフも加わりました。さらに、ロンドン・サビルローの超一流テーラーで本場のフル・オーダースーツをマスターし、イタリアのトレンド・デザインを熟知した技術スタッフを顧問として迎えました。2人の国際派マイスターの下、次の時代を担う技術者が研鑽に励む盤石な体制を整えて〝本物のハンドメイドのフル・オーダー〟を守り、起業200年に向けて新たなスタートを切りました。
紳士服の本流のフル・オーダーを
WEBサイトで発信
―ここ数年、空前のオーダースーツ・ブームが到来しましたが、本物のフル・ハンドメイドによるフル・オーダースーツとは。
仮縫いと本縫い合わせてハンドワーク50時間以上を要するという国際的な基準を満たすテーラーメイド・スーツだけをいいます。お客様の要望をヒアリングする「ビスポーク」スタイルで、お一人お一人の型紙、デザイン、シルエットで、お好みの生地を使いフル・ハンドメイドで仕立てます。この本来あるべきフル・オーダーを創業以来100年に及ぶ年月を継承してきた開業順に神戸「柴田音吉洋服店」、大阪「紳士服 松崎」、東京「銀座テーラー」、名古屋「テーラー神谷」の4店が結束し「センチュリー・テーラーズ・クラブ」のブランド(以下=CTC)を2020年に立ち上げ、WEBサイトを通じて情報発信を始めました。
―CTCとは。
源流は日本のテーラー地域一番店約30店舗が結集して1966年に立ち上げた「インターナショナル・テーラーズ・クラブ」(以下=ITC)に遡ります。勉強会の開催や情報交換、海外との緊密なパイプを活用する生地の仕入れ、ロンドンの新進気鋭テーラーとの交流などを通じ、世界水準の高いクオリティーを誇る洋服をお客様に提供してきました。バブル崩壊後は一時休会したものの、最近のオーダーブームの中、ITC主力メンバー4社がブランドとして登録商標したのがCTCです。(https://www.itc-bespoke.jp/shibata.php)
―情報発信は順調ですか。
本格的には今春からになりますが、本流・本物のフル・オーダースーツの良さをより多くの方に知っていただき、LUXURYファッションの分野で確固たるブランドになることを期待しています。
―月刊神戸っ子も期待しています。