9月号
「行ってみたい!」と思ってもらえる街・神戸のために
今年4月から神戸市で初めての多言語広報専門官になったルイーズ・デンディさん。
母国イギリスのことや広報専門官のお仕事のこと、大好きな神戸の将来像などお聞きしました。
神戸市市長室広報課
広報専門官 ルイーズ・デンディさん
神戸の魅力はリラックスした雰囲気と〝多様性〟
―初めて神戸へ来たときの印象は?
デンディ 私は上智大学に6カ月間留学した後、2週間だけ神戸大学の夏のプログラムに参加しました。東京では毎朝、満員電車に乗って通学していました。賑やかな東京とは違って、神戸は海の近くでおしゃれ、リラックスした雰囲気がとても気に入りました。
―神戸で仕事をすることになったのは何故ですか。
デンディ 関西、できれば神戸に戻りたいという気持ちがあり、JETプログラム(※)で、初めに勤務地を希望できるので第一希望を神戸にしました。希望がかなって神戸でALT(外国語指導補助)として2年間、国際交流員として神戸市国際交流推進部で1年8カ月間働きました。
―神戸の魅力は?
デンディ 私にとって神戸の大きな魅力は多様性です。例えば自然の多様性。私の故郷ノーサンプトンシャーはイングランドの中央辺りで海はなく、完全に平坦な所ですが、神戸には海も山もあります。また神戸は国際的な都市ですから、いろいろな国の人たちが住んでいます。カナディアンアカデミーのような大規模な国際学校や家族的なドイツ人学校などもあります。
―多様な食もありますが、いかがですか。
デンディ 実は私、刺身は苦手、柔らかい神戸ビーフは大好きで、イギリスのステーキより美味しいかな?大好きなスイーツもたくさんあります。イギリスはスコーンでは絶対負けませんが、そのほかでは負けてしまうと思うほど美味しいですね。
―イギリスと日本は似ているところがありますか。
デンディ 国民性が似ていると思います。例えば、髪の毛を切ってもらって、好きなスタイルにならなくても文句も言わずに「ありがとうございます」と言うタイプ(笑)。日本人もイギリス人もポライト(礼儀正しい)です。もう一つ、皆さんは「日本は島国です」と言いますが、イギリスも「島国」なんですよ(笑)。
―神戸と似ている街はイギリスにもありますか。
デンディ 私の故郷とは似ていませんが、ブライトンという街と似ていると思います。海が近くて、大き過ぎず小さ過ぎない丁度いいサイズの街。ポジティブで革新的な街です。
SNSを使って情報発信
―今月20日から神戸では大英博物館展が開催予定です。古くは、六甲山の開発に力を注いだA・H・グルーム、旧居留地の設計をしたJ・W・ハートなど、イギリスと神戸は深い関わりがありますね。
デンディ イギリスが昔から神戸に大きな影響を与えてきたことを誇りに思っています。ところが、イギリスではあまり知られていないだけでなく、神戸の存在すら知られていません。広く知ってもらうのが私の仕事だと思っています。
―海外に向けての広報の方法は?
デンディ SNSを使って海外向けの発信をしています。例えば、海外の若者の多くが使っているインスタグラムを活用して、魅力的な写真や綺麗な場所の写真で神戸をもっと知ってもらおうとしています。写真で見るととても分かりやすいと思います。
―神戸在住の外国人に向けては?
デンディ 神戸市の公式フェイスブックを週3回更新しています。外国人が参加したいなと思うイベントの情報だけでなく、市政情報や台風情報など、生活に必要な情報を英語で広報しています。現在、フォロワーが600人ほどいます。自分からアクセスするウェブサイトと違って、いつも見てもらえるのがフェイスブックの良いところです。ツイッターでは個人的に私自身が感じたことや行った所について、発信しています。
―お仕事の一つ、海外からのイベント誘致はどんな状況ですか。
デンディ 海外からのイベント誘致に取り組んでいる所属のサポートをしています。イギリス人はとてもラグビーが好きです。余談ですが、私はラグビー発祥の地、イギリスのラグビーという街の近くの出身です。まだ広報専門官になるちょっと前だったのですが、私はラグビーワールドカップ2019の誘致でプレゼンを行いました。施設の説明とグルメを中心に神戸の魅力をお話ししました。あまり知られていない24時間5言語対応している神戸市内の119番や、病院での通訳対応が拡大されていることなど説明しました。スポーツの大会では必要なことですからね。続いて、2020年の東京オリンピックのキャンプ地の誘致、2021年のワールドマスターズゲームズ(複数のスポーツの国際大会)の誘致もあります。これから神戸に目が向けられると思います。
神戸に住む外国人みんなで魅力を発信しよう
―最近はアジアからのお客さんはかなり多くなってきたのですが、欧米からはまだまだです。どんなことをPRしたらよいでしょうか。
デンディ 欧米人にとって日本のイメージは二つあります。一つは東京のようなネオンやビルがたくさんある新しい日本、もう一つは京都のような社寺や舞妓さんの伝統的なイメージです。神戸はどちらでもなく、訪れる理由は無いと思われています。でも神戸には新しさと古さがどちらもあります。個人的に私は、神戸の路地裏がとても面白いと思っています。ファッション、神戸ビーフを始めとするグルメ、安全安心に気を配った「こうべ旬菜」など質の高いものがたくさんあります。そういうものや場所をPRすればお客さんは来てくれると確信しています。
―どんな方法がありますか。
デンディ まず日本に住む外国人、特に大阪に住む人に向けて神戸の魅力を発信して、来てもらうようにすること。そしてSNSなどを使って、私がPRするのはもちろんですが、神戸に住む外国人みんなで発信していけばそれぞれの母国へとつながり、世界中でネットワークが広がります。神戸の外国企業に勤める外国人も多いし、JETプログラムの若いメンバーたちもやる気満々です。期待できると思っています。
―最後に、デンディさんが思い描く、神戸の将来像をお聞かせください。
デンディ 今は「神戸に住んでいます」と言ってもどこかよく分かってもらえません。「神戸ビーフ」と言えばやっと分かってもらえるという程度です。オリンピックが始まり、多くの観光客が日本を訪れるころには「神戸に住んでいます」と言うと、「私、いつも神戸に行きたいなと思っています」と言ってもらえるのが私の夢です。
―私たちも楽しみにしています。本日はありがとうございました。
※JETプログラム=総務省、外務省、文部科学省および一般財団法人自治体国際化協会の協力の下、各自治体が実施している「語学指導等を行う外国青年招致事業」
ルイーズ・デンディ(Louise Dendy)
神戸市広報専門官
1989年、英国ノーサンプトン生まれ。バーミンガム大学卒業後に来日し、2011年より湊川中学校・会下山小学校ALT、神戸市長室国際交流推進部国際交流員を経て、2015年より神戸市広報専門官に就任。母国語の英語をはじめ、日・西・仏・独・伊の6ヶ国語を習得。