2020年
10月号
10月号
神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~⑥嘉納治五郎後編
文武両道を体現した嘉納治五郎の有言実行
スポーツ外交の礎築く
講道館柔道の創始者、嘉納治五郎は武道家であると同時に教育者としても知られる。神戸の灘中・高校の創設者であり、現筑波大学の校長を長年務めるなど、日本の教育に広く貢献した。「文武両道」という言葉をこれほど分かりやすく体現した日本人として、彼ほどの適任者はいないかもしれない。さらに彼が目指した頂は高く、その視点は常に遠く世界へ向けられていた。スポーツ外交の先駆者として尽力し続け、東京五輪誘致のために晩年を捧げた。
1909年、嘉納は日本人として初めてIOC(国際オリンピック委員会)の委員に選ばれている。東洋人として初の快挙で、欧米人中心だった五輪の歴史に風穴を開けた瞬間でもあった。
まだ明治の頃。スポーツ後進国であり、外交下手だった日本の中で、彼が孤軍奮闘しながら、日本の威信をかけ、欧米をはじめ世界を相手に戦っていた事実を、現代日本人はどれほど理解しているだろうか。
嘉納が日本のスポーツ外交のリーダーとして奮闘する姿は、ベテラン俳優、役所広司が熱演した国民的ドラマで昨年、多くの日本人が再注目することとなる。
=次回は白洲次郎
戸津井康之