9月号
神戸市歯科医師会会長インタビュー 目指そう!80歳で20本
住谷 幸雄 (すみたに ゆきお)
社団法人 神戸市歯科医師会 会長
―神戸市歯科医師会とはどういう組織ですか。
住谷 昭和40年に設立された神戸市歯科医師会は、神戸市内9区の歯科医師会の連合体です。会員数972人。837の医療機関で構成され、会員からの会費と神戸市からの助成金で運営しています。
―市民向けにどのようなサービスを行っているのですか。
住谷 「8020運動」「口から始まる健康づくり」をベースに、歯科保健を重点的に進めています。
主な市民サービスとしては、1歳半、3歳児の歯科健診、市立保育園・幼稚園でのむし歯予防のためのフッ素洗口、高齢者に対する在宅歯科診療、障がい者に対する治療「こうべ市歯科センター」の運営、休日歯科診療などがあります。また市内の小中高等学校の学校歯科医も務めています。
―成果は上がっていますか。
住谷 学校児童のむし歯率は全国平均に比べてもかなり低く、優秀です。神戸市保健福祉局・教育委員会ともタイアップしたむし歯予防活動のほか、「食育」ともタイアップして子どもの栄養問題にもかかわる歯の大切さを啓発しています。
―一般市民向けの口腔ケア啓発活動はどのように行っていますか。
住谷 6月の食育フェアや10月のこうべ福祉・健康フェアで歯科相談を実施しています。
―「8020運動」とは?
住谷 日本歯科医師会が始めた運動で、美味しいものを食べ続けられる元気な歯を80歳になっても20本残そうというものです。平成元年の開始当時は、80歳以上の方で健康な歯が20本以上残っているのは全体の約5%でしたが、平成19年には25%に達しました。現在、50%を目指しています。神戸市歯科医師会もそれに準じて啓発を進めています。
―歯の健康は全身の健康につながるのですね。
住谷 成人の80%以上が歯周病です。皆さんあまりご存知ないと思いますが、歯周病菌は全身に巡り影響を及ぼしているのです。糖尿病や、動脈硬化などの血管系疾患、心臓疾患、呼吸器系疾患などを引き起こしたり、妊婦さんの場合は低体重出産の原因になる場合もあります。
―最も効果的な予防方法は?
住谷 主たるものはブラッシングです。しかし、ホームケアだけでは磨いていても磨けていないケースも多く、定期的な健診が重要になってきます。40歳の節目健診では歯周疾患検診、妊産婦さん対象に歯科健診を取り入れていただき、指定医療機関でも実施しています。ところが、40歳の歯周疾患検診の定着率はまだ5%程度、妊婦検診は28%程度で、もっと広めていきたいと考えています。
体の中でも口は、喋ったり食べたりする大切な器官です。それを再認識して、定期健診の必要性をもっと知っていただきたいと思います。せめて一年に1回、できれば一年に2~3回程度は健診を受けて欲しいですね。
―むし歯や歯周病は予防するのが理想ですが、治療する場合、全てが保険適用にはならないのですか。
住谷 患者さんの約8割が保険で治療しています。インプラントやホワイトニングなどの審美歯科系は保険適用外ですが、むし歯治療や歯周病治療、入れ歯など全て保険で治療可能です。ただし、良い材質を使いたいという場合は保険ではできません。
―「こうべ市歯科センター」の役割は?
住谷 神戸市歯科医師会は昭和53年から神戸市の委託を受けて障がい者対象の診療所運営と診療に携わってきました。平成16年、新たに神戸市歯科医師会が運営する「こうべ市歯科センター」を長田区駒ケ林に開設しました。
当センターでは、一般の歯科医院では治療できない障害をもつ患者さんや治療困難な患者さんを全身麻酔を含めたいろいろな方法で歯科治療を行っています。
―休日診療所は?
住谷 兵庫県歯科医師会の付属診療所として昭和47年に設立されました。本年度から神戸市歯科保健医師会が委託され診療しています。日曜・祝日、年末・年始に救急の処置を行っています。
住谷 幸雄 (すみたに ゆきお)
社団法人 神戸市歯科医師会 会長
1969年、大阪歯科大学卒業。同年、神戸大学医学部歯科口腔外科入局。1979年、神戸市中央区に住谷歯科を開業する。2009年より、(社)神戸市歯科医師会会長を務める。