2019年
2月号
2月号
世界の民芸猫ざんまい 第九回
「我輩は 黒猫 である」 珍客がやって来た
中右 瑛
我が家に珍客がやって来た。一○一匹ならぬダルメシアン模様の猫だ。世に、白黒の水玉模様の猫なんているはずがない。天外な発想のご主人さまがとくと頼んで焼き上げた九谷焼の特注品だ。ご主人さまは根っからの諧謔心でもって究極、理想像の猫を創りあげようとしての結果である。
さて、このダルメシアン猫の愛称を考えているらしい。ポンチャンがいい、と考えたが、 ポンチャンは狸の名のようだ、というのでダメ。それでは玉ちゃんがいいとか、招福に因んで福ちゃんがいい、などとり沙汰されたが余りにも古すぎるというので、新しく横文字にしたそうな。ラッキーカムカムの「ラッキーちゃん」がいい、と決まったらしい。
青い目、小さい口元、遠くを見つめ手をあげ福を呼ぶ、上向きの顔が愛らしいなどと、ご主人さまが大いに気に入って可愛がっている。
もう一つの輩をご紹介しよう。米国産の珍猫シルベスター君だ。
この珍猫との出会いは、ある店の店頭に飾られた大きな看板用のドール。強烈な印象で、ご主人さまを呼び止めたのだ。こんな珍猫を見る機会はめったにない。
戦前(1945年)、アメリカのテレビアニメ界にデビュー。ミッキーマウスの対抗馬として活躍した。シルベスターの登場するアニメ「ルーニー・テューンズ」は、日本でも1960年代から放送された。
■中右瑛(なかう・えい)
抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。