8月号
Power of music(音楽の力)
第8回
第8回
ホラー映画、音楽のからくり
『背筋も凍るあの音楽』
上松 明代
夏の風物詩、肝試し。「神戸ホラースポット」とネット検索したら色々出ますね。しかし今回のテーマはスポットではなくホラー映画。音楽の力で背筋を凍らせてさしあげましょう。
私、ホラー映画が大好き。特にサイコサスペンス系ムービー。アート性豊かな作品が多く、色彩美が恐怖を増幅させる。しかし、恐怖を煽る映像も、そこに音楽が存在しなければホラーは成立しない。耳(聴覚)からの情報はすごいのだ。
サイコサスペンスというジャンルの草分け的存在であるアルフレッド・ヒッチコックの代表作『サイコ』は、白黒映画だが今観ても見応えある作品だ。音楽を担当したアメリカの作曲家バーナード・ハーマンは、弦楽器だけというシンプルに構成されたオーケストラを巧みに操り、恐怖を表現する。『サイコ』を観たことのない人でも、引っ掻くようなヴァイオリンの効果音を一度は聞いたことがあるだろう。現在のオカルト系番組などで必ずと言っていいほど使用される音。実はあのヴァイオリンの音は単独効果音ではなく、テーマ曲の一部抜粋である。
音楽は作品を盛り上げ、想像力を刺激する。それは音に限らない。秀逸な作品は「静寂」を上手く利用している。「静寂」は音と同じくらい感情に訴えかける力がある。特にホラー映画の、静けさの後に放たれる音楽(音)の力と言ったら最強だ。
映画は視覚情報優位な媒体だが、実は高い割合で無意識に音に誘導され、音楽で感情をコントロールされている。試しにホラー映画をサイレントで観て欲しい。緊張感は失われ、無味乾燥なものとなってしまう。冒頭でホラー好きと豪語した私だが、劇場の立体大音響には耐えられない。音が恐ろしすぎる。我ながら情けない。音楽が情緒に訴えかける影響は絶大なのだ。
さて今宵、わたくしの作曲したサイコサスペンスミュージック、その名も『木曜日の呪縛』、というショートムービーをYouTubeにてご用意しております。是非ご覧になって背筋を凍らせてみて下さいませ。かしこ。
上松明代(フルート奏者・作曲家)
武蔵野音楽大学卒業。在学中にハンガリーの「音楽」と「民族」に魅了され、卒業後ハンガリー国立リスト音楽院へ留学。31歳で知的好奇心から兵庫教育大学大学院で作曲を学ぶ。演奏活動と同時にバイタリティー溢れる作曲活動も展開中。六甲在住。You Tubeにてオリジナル曲公開中。
オフィシャルサイト http://akiyouematsu.com