12月号
「神戸で落語を楽しむ」シリーズ 新開地には寄席が似合う
寄席三味線 入谷 和女 さん(姉)
落語家 桂 あやめ さん(妹)
地元に寄席ができた喜び
─お二人は神戸のご出身だそうですが。
あやめ 兵庫区です。新開地は中学の学区が同じなので、友達の家が普通にあるところで。
和女 寄席や劇場があった頃も知っていますが、家族で食事に来る街という感じでした。
─そんな昔から馴染みのある街に喜楽館ができました。
あやめ みんな「新開地で大丈夫なん?」と心配していたようですけれど、できてみたら「ええやん」という反応で。
─神戸のお客様の反応はいかがですか。
和女 すごく良いです。「待ってました!」くらいの勢いで。
あやめ 出ている噺家も「なんて素直な反応なんや」と。
─この世界に入ったきっかけは。
和女 私たちが高校生の頃は漫才ブームだったんですよ。
あやめ 関西の地元の寄席に出ている人が急に東京で売れていったんです。昨日テレビに出ていた人を今日生で観られるから寄席で出待ちとかしてて。そうしているうちに落語に興味を持つようになり、2人で落語会に通うようになって。
和女 行くと必ず音が鳴っているじゃないですか。覗いたら意外と若い人が弾いていたんですね。それで私もやってみたいと思ったんです。趣味で小唄をやっていたし。
あやめ 私も自分で落語をやってみたいと思うようになって。カセットテープ借りて覚えて、覚えたら誰かに聞いてほしいじゃないですか。それで素人の会とかに出て人前でやっていたらもっと大勢の人の前でやってみたい、これが仕事って面白いって思ったんです。いろいろ観に行っている間に5代目桂文枝(当時は3代目小文枝)師匠の落語が一番いいなと感じて、ならば第一志望のところに入門しようと。
─すんなり入門できたんですか。
あやめ 師匠の追っかけからはじめました。顔を覚えてくれて話もしてくれるようになったので、弟子入りしたいと伝えたら「女の子取ったことないし」と。でもちょうどその頃、師匠に付いていたお弟子さんは車の免許を持ってなかったので、すぐ合宿免許へ行き免許証見せたら師匠も断れず…(笑)。
─女性の落語家はほとんど初めてだったのではないですか。
あやめ 先輩に露の都姉さんがいます。その前にも何人かいらっしゃいましたが、多くは結婚とかで続かなかったみたいですね。でもちょうど私が入門した頃から、何の世界でもそうですけれど女性は結婚や出産を経験しても仕事を続ける、山口百恵から松田聖子へと時代が変わっていった時代で。
─古典落語は登場人物がほとんど男ですし、苦労したのでは。
あやめ 自分よりも観ている人の違和感があったようで、「この子は男か?女か?」と迷って素直に落語に入っていけない感じで。女や子どもが出てくる落語が合うのではとやってみたけれど、それこそ男の人の落語に出てくる女なので、いっぺん男になって女になるみたいで余計にやりにくくて。
和女 着物も男仕立て着てたものね。
あやめ 男にならないとお客が迷うと思って。でも自分は男になりたい訳じゃないし、女のままで落語やりたいのに、なんか違う方向に行っているなって。試行錯誤の結果、ないならば創ろうと創作やるようになったんですね。創作をはじめて演じたときに、ピンクの着物で、ポニーテールにリボンつけてって感じだったんですけれど、女子大生しか出てこない話だったので違和感なく楽にできて、それからずっと創作です。
和女 そんな妹をハラハラしながら見ていました。でも悩んでいる感じではなくて、やってみようという感じでしたね。
陰の花形、お囃子の仕事
─お囃子さんは寄席の音楽を全部担当するのですか。
和女 太鼓や鉦などの鳴り物と笛は噺家さんが担当するんです。落語のお囃子は女性と決まっていて、担当は三味線と唄です。基本的には出囃子とはめものですね。はめものとは落語の中での音楽の演出で、話に合わせて演奏します。あとはマジックや踊りなどの色物の音楽もやります。
─はめものは上方ならではですよね。
和女 東京でもありますけれど、上方の方が多いですね。台詞か仕草で入るんですけれど、タイミングが噺家さんによって違うので慣れないと難しいです。失敗すると落語を潰してしまうので息づかいまで集中します。
─林家染雀さんとの音楽漫才ユニット「姉様キングス」の活動はお姉さんの影響ですか。
あやめ 実は私も10代の頃から小唄をやっているんですよ。相方の染雀くんも長唄をやっていて、たまたま2人で日本髪のカツラを手に入れたので、内海桂子・好江師匠が芸者の格好で漫才やっているような感じでやりたいと思って。来年結成20年になります。
和女 面白いよね。
あやめ 音楽好きだけど稽古は嫌いだから楽器が上手くならなくて。もともと音曲入りのネタが好きなんです。姉が三味線なんで多少無理をきいてもらえますし。
和女 ロックとか演歌とか、クリスマスソングとか、そんなんは楽しいですね。三味線でいろいろできますから。
あやめ 上方のお囃子さんは「アカン」とは言わないです。
和女 ちょっと時間もらえれば何でも弾きます。ハマると快感です!でも何やわからん時もありますが(笑)。
もっと女性を新開地に
─今後、喜楽館をどう盛り上げていきたいですか。
和女 私たちは裏方ですので、一所懸命弾いて貢献していきたいです。お囃子のステージを夜席とかでできたら楽しいですね。
あやめ 平日の昼にもう少し入ってほしいので、これからは団体とかツアーとかをよぶことを考えないといけません。そして女の人にもっと来てほしいですね。東山商店街で買い物したらこんなに安いでとか、こんな美味しい洋食屋さんあるでとか、新開地の街で遊んで、食べて、笑って、晩ご飯の前に帰る。そんなツアーもやってみたい。あと、喜楽館の階段がお洒落で、この前「花詩歌タカラヅカ」というイベントをしたのですが、階段で写真撮ったら「どこの劇場?」っていう感じだったので、美人撮りやコスプレ撮影スポットとして打ち出すのも面白いと思っているんです。
─あやめさんは喜楽館の向かいにお店「キラ★クウカン」をオープンしたそうですが。
あやめ 喜楽館ができて、新しいお店もできてほしいと思って、ならば自分でやろうと。お店のオリジナルビール「ワラエール」も用意していますよ!喜楽館に行く前にぶらり立ち寄れるスポットにしたいし、トークショーなども企画していきたいですね。
神戸新開地・喜楽館
(新開地まちづくりNPO)
TEL.078-576-1218
新開地駅下車徒歩約2分
(新開地商店街本通りアーケード)