5月号
ボーイスカウト神戸第23団 通称〝寺子屋〟
「寺の境内には子どもたちの声が溢れるもの」という宇賀隊長が「寺子屋」と呼ぶボーイスカウト神戸第23団。ユニークな隊長の下での強烈な体験が、隊員たちの人生に大きな影響を与えてきた。隊長を慕って集まる元隊員たちに、当時の思い出を語っていただいた。
修行の場だった大峰山夜間ハイク
宇賀隊長といえば、「ローバースカウト現役中に3回は行け」と言われていた「大峰山夜間ハイク」。強烈な思い出です。夜8時頃に集合し、翌朝までかけて、女人禁制で知られる大峰山の中でも特に険しく、山伏も分け入らないコースを大学生の私たちが小学生を連れて縦走するのです。どこが入口かもよく分からない所から真っ暗な山に入り、40~50キロはある距離を歩くのですから怖いですよ。しかも、子どもたちを連れてですからね。足をくじいた子どもを背負って歩いたこともあります。途中で「一人足りない!」ということもありました。その時は、石丸君の弟が川に落ちて「助けてー!」と叫んでいました。大峰山は私たちにとって、まさに修行の場でしたね。
今ではあり得ない経験の数々
琵琶湖キャンプでは、朝から湖で泳いでいたら何かが足に当たる。「何だろう?」と思ったら大きなシジミ。それ採って味噌汁にして食べたのですが、後から聞いた話では養殖シジミだったそうです。これももう時効でしょうね。台湾へ行ったときは、日章旗揚げたら、銃口向けられ…、「下げろ!」と慌てて下げたけれど、日章旗を持っていた片山君はずっと銃口を向けられたまま。恐ろしかったでしょうね。そのほかにも話は尽きないほどいろいろありました。もう時効とはいえ、これ以上はちょっと話せないことばかり(笑)。宇賀隊長と一緒に隊員たちは、今ではあり得ないような経験をたくさんしました。
宇賀隊長のもと、神戸第23団には独自の伝統がある
ボーイスカウトは指導者によってそれぞれ団のカラーが違います。神戸第23団の宇賀隊長はとにかくユニーク。キャンプや海外経験はもちろん、ご自身が多趣味だから隊員もヨットを操縦させてもらったり、50年以上前から隊長が毎年3月末に出しているスキーバスツアーにも参加したり、他の団ではできなかっただろう経験をさせていただきました。宇賀隊長は指導要領から完全に逸脱していましたからね(笑)。もちろん本筋は守りつつですよ。ですから、他にはない独自の伝統をもっています。誰でも知っている神戸第23団、泣く子も黙る神戸23団(笑)。特異な経験のお陰でしょうか、飛行機を造っている石丸君、アスキー創業者の西君をはじめ、教師、医者、大工、電機屋…いろいろな所で活躍する多彩な人間が巣立っています。
未だに時々、宇賀隊長の顔を見たくなる
やんちゃをして宇賀隊長から怒られたという思い出はありませんね。逆に私たちが「ええんかなあ?」と思うようなやんちゃをご自身がやってしまう(笑)。でも要所はきちんと抑えてくれていますから、子どもだった私たちが親にも相談できないことを話せる雰囲気をもっておられましたね。こんな年齢になっても不思議と時々、宇賀隊長の顔を見たくなり、機会があるごとに先輩・後輩が集まり、当時の思い出話で盛り上がっています。第23団と隊長のお陰で一生涯大切にできる、人とのご縁をいただいたと思っています。