2月号
素朴で純粋な親切心で経済・社会・組織・国際の課題に取り組む
毎年1年の任期で選出された会頭のもと基本理念を掲げ、さまざまな視点を持って社会課題の解決に向け活動する青年会議所。創設66年目にして神戸青年会議所(神戸JC)から初めて、日本青年会議所(日本JC)2024年度会頭に就任した小西毅さんに目指すところや活動内容についてお聞きした。
神戸JCで育てていただいた力を日本JCで発揮したい
―日本JCについてご紹介ください。
世界各国にある国際青年会議所(JCI)のメンバーとして日本を代表するのが日本JCです。北海道から沖縄まで10の地区協議会(近畿地区など)があり、それぞれがブロック協議会(兵庫県など)に分かれ、その中に神戸JCのような市町ごとのLOM(Local Organization Memberの頭文字をとり、国家青年会議所の中に属する各地青年会議所の意。現在671LOM、約27,000人が所属)があります。全体の総合連絡調整機関としての役割を持っているのが日本JCです。
―初の日本JC会頭に選出されたときの心境は?神戸JC歴代理事長からエールはありましたか。
国の課題解決に関わるというのはなかなか経験できることではありません。神戸JCで育てていただいた力を発揮できるのであれば「喜んで!」という思いです。先輩方が参加される神戸JCのシニア例会で壮行会を開催していただき、上島さん(UCCホールディングス上島達司会長)をはじめ歴代理事長からたくさんのエールを頂きました。日本JCの活動が多忙なため自宅にほとんど帰れないだろうと、私の等身大パネルを頂き自宅に置いているのですが、玄関を入る度に自分にびっくり(笑)。とても温かい雰囲気で送り出していただき感謝しています。
―2024年度の基本理念「親切心が織りなす豊かさで 笑顔あふれる未来へ」とは?
私は「素朴で純粋な親切心」を大切にしています。自分の事業とは関係なく、何の金銭的な利害関係がない人たちと一緒に組織を作って社会課題を解決していくことこそが親切心です。持っているのに発揮できていない人はもったいない。親切心を磨き、発揮して社会課題に対して動き、自分自身の成長にもつなげてほしいと思っています。
―日本人らしい考え方ですね。
誰かのために何かをやるというのは日本人が持っている調和の心だと思います。大事にするべきですし、追求することで自分も周りもより良くなり、社会課題も解決できる。こんないいことはないです。
課題解決に向け、4つのグループに分かれてアプローチ
―どんな運動を予定しているのですか。
経済面で日本の問題解決を目指す「経済」、地域の問題解決を目指す「社会」、人材不足など各LOMが抱えている問題を収集し解決に向けて一緒に考え、運営を支援する「組織」、世界会議、アジア太平洋会議などで日本をアピールして運動を提案する「国際」、4つのグループに分かれて運動を構築し、地域団体、企業、行政などに提案し協力を得ながら推進します。軌道にのった運動は引き継がれ、その後も継続されます。
―経済グループで最も力を入れようとしている運動は?
今の日本で最も盛況で今後も上向く見込みがある産業はインバウンドだと思います。その恩恵を受けている地域がある一方、そうではないけれど可能性がある地域がたくさんあります。魅力ある地域を発掘して旅行会社にツアーを提案し、企業利益と地域の経済活性化の好循環を作ろうというのが今年度掲げる最も大きな目標です。
―社会グループは?
多くの課題に取り組む予定です。中でもデジ田(デジタル田園都市国家)構想については行政からも「ぜひ進めてほしい」という依頼を受けています。人材育成を含めデジタルを活用して社会課題を解決する運動から始めようと早速、プログラミングができるがその能力を発揮する場所がない高等専門学校の学生さんを対象に「市町村がそれぞれに抱える課題を解決するためのアプリを一緒に作りましょう」という提案をさせていただいています。
―国際グループについては?
一つは経済グループで作るツアーを世界会議などの場を使って広く知ってもらうよう努めること。また今年度もJCIの各国会頭が集まるグローバルピースサミットでは平和について考え、何ができるかを話し合います。
―日本JCとして発信したいことは?
戦争を経験しているからこそ日本人は平和を取り戻そうとしています。日本JC主催の国際アカデミーで昨年7月にウクライナの次期会頭が「戦争が始まってから平和について考えるようになった」と話しておられました。ロシアの次期会頭とも議論を戦わせました。そこには解決策はないかもしれません。しかし、日本の調和の精神を持ってもらいたいという思いで今後も発信し続けるつもりです。
―1年間でいくつもの運動を推進していくのは大変ですね。
決して一人で担うわけではなく心強い仲間がいます。4人の副会頭と専務理事をはじめ常任理事、35人の議長・委員長とそれぞれに約50人のメンバーが全国から集まっています。分担・協力しながら運動を作り広めていきます。
数字では表せないJCの魅力
―JCの魅力は?
仕事や家族との時間を削ることもある活動ですが、それに見合う、あるいはそれを超える自己成長があります。仲間ができて、自分や子どもたちが暮らす地域を良くしていける。ひいてはそれが社業にも生きてくる。JCの魅力は数字では表せないものです。
―なぜ神戸JCに入られたのですか。
社会常識とズレていると言われるのが弁護士です。父親や職場の先輩方から「仲間だけで仲良くしているとその世界が常識になってしまう。外の空気や外の人に触れたほうがいい」とJCを勧められ、私自身も人と会うことが好きなので入るのならば生まれ育った神戸でと決めていました。入ってからは背中を追いたいと思える先輩方に出会うことができました。
―これからのJCを担ってもらう20代、30代の人たちに向けてメッセージを!
SDGsが社会に浸透し、社会課題を解決できる企業が生き残れると言われています。社会人としても社会に居続けるためには課題解決という発想を持つことが大切です。「じゃあ、どうすればいいのか?」。考えても非常に難しいと思います。「自分の街を良くしたい」という素朴な発想から始めれば、考え方や仲間の作り方、組織の動かし方などが自然と分かってきます。JCというのはそんな団体だと思います。社会のトレンドに敏感な若い人たちにぜひ参加していただきたいと思っています。
社会課題がある限り、JCは解決のために動き続ける
―2026年には神戸で全国大会開催予定ですね。
昨年、立候補して開催が決定しました。街のあちこちで再整備が完了するとてもいいタイミングでの開催になりそうです。25年春に開業予定の神戸アリーナ(仮称)をセレモニー会場にしようと計画しています。
―神戸のどんな魅力を伝えたいですか。
全国から一万余人のメンバーが神戸に集まります。食べるものが安くて美味しくて、異種のものを集めたらすぐに溶け合い、おしゃれで美しいものが似合い、コンベンションシティーとしての機能が整っている…来ていただくだけで魅力は伝わると思います。
―日本JCの将来像は?
自分たちの団体を良くしたいとか目立ちたいとかは一切目標に掲げず、国や地域をより良いものにして明るい社会を作ろうという目的だけで動いている唯一無二の団体です。社会も経済もすごいスピードで変わっていく今、日本JCは社会課題がある限り、毎年出てくる課題に取り組み解決し続けるだけです。
―思い描く日本の未来は?
世界の中で日本の競争力が落ち経済力が弱くなったことにやっと気づき解決しようとみんなが動き始めたところです。いずれは良い方向に向かうと信じています。人口減少、大都市集中が止められない状況下、あらゆる地域に住んでいる人たちが平等に豊かに暮らすために打ち出している施策がいずれは功を奏するでしょう。活気を取り戻したインバウンドに合わせて各地域の様子も変わり新しい産業が創出されるでしょう。私は前向きにこの国の明るい未来を思い描いています。
公益社団法人日本青年会議所
2024年度(第73代)会頭
小西 毅(こにし たけし)さん
1984年、神戸市生まれ。2006年京都大学経済学部を卒業後、09年に関西学院大学法科大学院司法研究科を卒業。同年最高裁判所司法研修所に入所。北浜法律事務所を経て17年大阪A&M法律事務所で共同代表に就任。神戸青年会議所には15年に入会。22年に理事長へ就任後、23年に副会頭。そして24年より日本青年会議所第73代会頭に就任。