1月号
人を守り、港を守り続けた「隧(みち)」「湊川隧道」で貯蔵 サスティナブルな日本酒 「隧ZUI」
辛丑に神戸の想いを込め、新たな価値を生み出す
「隧ZUI」 boh boh KOBEにて数量限定で販売中
六甲山系から急峻な坂を下る湊川は氾濫を繰り返し、流域に暮らす人たちに大きな被害をもたらしていた。大規模な河川付け替え工事が始まり、1901年に会下山を貫く「湊川隧道」が完成した。近代土木技術の英知を結集した「日本初の河川トンネル」は開口部と側壁・天井がアーチ形煉瓦造りの美しいフォルム。そのデザイン性と機能性は高く評価されている。100年にわたり街を守り続け、2000年に完成した「新湊川トンネル」へと引き継ぎ、湊川隧道はその役目を終えた。過去から現在へとつながり、神戸の発展に貢献してきた〝隧〟が取り壊されることなどあってはならない。「湊川隧道保存友の会」が中心になり整備・保存し、2019年には国の有形文化財に登録され、活用の道を模索している。
湊川隧道日本酒貯蔵プロジェクト始動
2020年、早駒運輸株式会社と株式会社神戸酒心館、兵庫県、湊川隧道保存友の会の4者が連携協定を締結し、5年間の湊川隧道における日本酒貯蔵プロジェクトが始まった。早駒運輸の渡辺真二社長に「船会社が何故?」と尋ねると、「湊川が運ぶ大量の土砂が海へと流れ込み、遠浅の海に変貌していたら、優れた機能を持つ神戸港はなく、早駒運輸135年の歴史もなかったでしょう。『港を守ってくれた湊川隧道に感謝の意を表したい』。そんな思いがあります」とここに至った経緯を話してくれた。貯蔵酒売上の一部は湊川隧道の保存に活用される。
天然のカーヴで180日間熟成させる日本酒「隧ZUI」
人工的な空調や温度管理に一切頼らず、気温約15度で安定している湊川隧道「天然のカーヴ」で180日間熟成させる「隧ZUI」はCO2を排出せず、「SDGsの時代にふさわしい日本酒」といえる。「通常は5度から10度で貯蔵しますから、酒心館の杜氏さんにとっても今までにない経験。仕上がりを楽しみにしているそうです」と話すのはHAYAKOMAブランディングプロデューサーの渡邉美香さん。2021年11月12日に蔵出し、12月1日から発売開始した「隧ZUI 辛丑ver.」。ラベルは湊川隧道をイメージする煉瓦色に早駒運輸オリジナル「錨マーク」、そして自ら想いを込めて揮毫した「隧ZUI」。「2021年『辛丑』は湊川隧道築造から干支が10回巡り120周年、一般公開から20年、トンネルサミット開催…いろいろな偶然が重なった意味深い年です。勤勉実直に働き農耕を支えた牛(丑)年は『我慢の年』『発展する前触れの年』。コロナ禍を耐え、2022年はきっと発展の年になります」
隧道を大切に保存するためにさまざまな規制があり、貯蔵する本数は限定される。「毎年、720ml瓶3000本を蔵入れ蔵出し、1800ml瓶117本は蔵入れし5年後に蔵出しします。味にどんな変化が生まれるか、楽しみです」。新年を迎え〝隧〟は明るい光へと向かって続いている。
【関係Webサイトはこちら】
■神戸シーバス
http://www.kobe-seabus.com/
■「隧 ZUI」2021辛丑Ver. の詳細はこちら
https://www.shushinkan.co.jp/news/zui2021.html