2020年
6月号
6月号
時代の相が変わる|高士 薫|新型コロナウイルス禍で思うこと
人は環境に順応するものだ、あるいは、順応してしまうものだとつくづく思う。この二月まで、平日夜はほとんど外での会食だった。よく食べ、よく飲み、よく笑った。それが消えた。
社内でもよくしゃべった。冗談が受ければうれしく、滑るとつまらなかった。今は社内ですらスマホやパソコンを使ったウェブ会議だ。もう慣れた。簡潔にポイントだけを、という話し方になる。世間話は省略だ。冗談もまず言わない。会議から、笑いが消えた。
それを、たいして苦痛とは思わない。あっ、これもありだな、と思っている。もちろん個人差はあるだろう。私の場合、の話である。
この号が世に出るころ、新型コロナウイルスをめぐる状況はどうなっているのだろう。流行の第一波はなんとかしのいだようだが、第二波の兆しは出ていないか。それも、20紀初頭のスペイン風邪のように、致死率を高めて襲ってくる気配が現れてはいないか。神戸で学生時代を過ごした京都大学の山中伸弥教授は、懸命に情報を発信しておられる。「長期戦になる。甘く考えないでほしい。できる限りの感染防止策を実践してほしい」と。執筆時点の私はまだ感染していない(はずだ)が、感染前であれ感染後であれ、山中教授の教えに従おうと思っている。