2019年
11月号
11月号
兵庫県のANDO建築探訪 ⑪
兵庫県立こどもの館 兵庫県姫路市 1989年完成
小学生時代は、我ながら腕白でした。宿題は放課後にすませるので教科書は持ち帰らず、家で勉強した記憶はありません。案の定、成績は悪かったのですが、喧嘩や運動、ベーゴマやベッタンといった遊びの類は意地で、誰にも負けませんでした。ともかく、放課後、夕暮れまでの時間を、いかに仲間と面白おかしく過ごせるかが全てでした。今日は野球、明日は魚釣り、釣った魚は学校のプールに放して育てようか……自分達次第で、毎日はいくらでもワクワクと、スリリングになりました。
そんな少年期を過ごしたからでしょう、空地の遊び場も少なく、習い事で忙しい今どきの小学生を見ると気の毒に思います。人との付き合い方、自然との付き合い方、そして自分自身との付き合い方。子供時代、身体で学ぶしかない、“生きる力”を身につける機会を奪われているように見えるからです。
だから、子どもの施設を設計するときはいつも、決まった機能がない“余白”の空間を中心に考えます。1989年に完成した《兵庫県立こどもの館》は、私がつくった最初の子供のための建築でした。本館と野外広場、工房をあえて引き離し、間を散策路でつないで、桜山湖畔の全長500メートルの敷地全体が“遊び場”となるように設計してあります。傑作は、施設オープンにあわせて始まった「児童彫刻アイディア国際コンクール」でした。世界各国の子どもに彫刻の原画を募り、受賞作を造形作家の新宮晋さんが具現化する企画で、2007年までに約20体、子どもらしい想像力に満ち溢れた作品が生まれました。開館30周年を迎える今年、再びこの企画が復活します。今の子どもがどんな創造力を見せてくれるか、楽しみです。
■兵庫県立こどもの館
兵庫県姫路市太市中 915-49