2019年
6月号
6月号
兵庫県のANDO建築探訪 ⑥ 兵庫県立美術館 神戸市中央区 2002年完成
先月末、脇浜海岸通りの《兵庫県立美術館》の増築「第二展示棟―ANDO GALLERY」がオープンを迎えました。兵庫県立美術館は、1995年の震災の後、復興のシンボルとして構想されたものです。設計コンペで、選ばれた私がちょうど隣接する防災公園の計画中であったことで、水際の公園と一体化する美術館が実現しました。
市民のための「芸術の館」という、この施設名称通りに強力なリーダーシップを発揮するのが、現館長の蓑豊さんです。「芸術には人生を豊かにし、街を元気にする力がある」との信念のもと、大阪市立美術館、金沢21世紀美術館で館長を歴任し、美術館をもっと身近な存在にとずっと頑張って来られた方です。《兵庫県立美術館》でも、美術館と王子公園を結ぶミュージアム・ロードの企画を皮切りに、公園でのストリート・バスケット大会、海側の大階段を客席としたレガッタの開催など、美術館を盛り上げるためのアイディアを次々と発案、実行されてきました。屋上には巨大なカエルのオブジェが出現しています。美術館が生き生きと動き出すさまは、見ていて爽快です。
増築棟の計画も、井戸敏三兵庫県知事と蓑さんとの会話の中から生まれたものでした。主たる機能は、兵庫県にまつわる私の建築の展示・紹介ですが、吹き抜けの階段ロビー、本棚で覆われた壁など、さまざまな使い方が出来る“遊び”の空間もつくってあります。海側、正面には巨大な青いリンゴの彫刻を設置しました。ずっと青いまま挑戦心を忘れない、この“青春”のシンボルと、成長する美術館を是非見に来てください。
■兵庫県立美術館
神戸市中央区脇浜海岸通
1丁目1−1