12月号
家庭でも学校でも、生きる「力」をつける教育が大切
ユーデックは、子どもたち(You)の豊かな夢(Dream)実現のためにすばらしい教育(Educate)のノウハウを創造(Create)する企業として30年間歩んできた。
模擬テストの制作をはじめ、編集・出版を通しての教育情報の発信、電子パンフレットや説明会での受験情報提供など、時代のニーズに応えながら教育サービスを提供している。子どもたちの夢実現をサポートするために家庭や学校でやるべき教育とは?
ユーデック教育研究所所長の植田実さんにお聞きした。
ユーデック教育研究所所長
株式会社ユーデック 情報企画部部長
植田 実 (うえだ みのる)さん
―子どもの成長には親の影響力は大きいのでしょうか。
子どもがどんなふうに育っていくのかは、小学校に入学するまでのご家庭での親御さんの教育のやり方次第です。転ぶ前に親がいつも手を差し伸べてきた子どもは、転び方を学習しないので、大きくなっても転んでひどいけがをします。忘れ物をしたときに親がすぐに届けていたら、子どもは全然困ることも、忘れ物をしたらどうなるのかを学習することもありません。むやみに暴力を振るうことは決して許されませんが、子どもは痛い目や恥ずかしい目に遭わなくては、痛みや、苦境・迷惑といったことを理解することはできません。
―日常の家庭での過ごし方が大切なのですね。
「自分と自分以外の人が居る」という概念が一番大切ですが、その最も小さなものが家庭で、それが広がって近所や学校、塾になっても同じです。これが考えられなければ、たとえ東大を出ても社会に出てからコミュニケーションが取れない人になってしまいます。コミュニケ―ション力は昨今よく言われているグローバル教育の基本です。世界へ出て行く、世界中から人が入って来る時代です。そこで、とりあえずは世界で使われている英語を学ぶことは有意義でしょう。しかし、英語は生きていくための手段にしかすぎません。単語力があり、読んで、聞いて、書けるけれど、他人の気持ちは分かりません、人との協働精神はありません。これでは、生きていくための「手段」だけは持っていても、生きていくための「力」がない。この「力」の基本的な部分というのは、家庭(保護者)が担っているといえるでしょうね。これからは学校も、うわべだけの学力ではなく、真に生きる力と学びの姿勢をつけてあげることを目指さなくてはいけないでしょうね。
―家庭ではどうすればいいのでしょうか。
対話と会話、ダイアログとカンバセーション。これが無い家庭・環境はつらいですね。常に親が子どもの先回りをして一方的に、「おなかすいた?」「楽しかった?」話しかけていると、子どもは言葉を発する必要がなくなってしまいます。そんな質問は必要なくて、親は親の話をしていればいいんです。放っておいたら子どもから、「おなかすいた」「今日ね…」と話しかけてきます。口もきいてくれない、返事もしてくれない時期がきたとしても親は挫けずに、世間話でも何でも、話を続けていればいいんです。
―生きる力をつけてくれる学校はどう見分けたらよいのでしょうか。
ひとつ挙げられるのが授業のスタイルです。これまでの学校の授業は先生の「チョーク&トーク」。「質問ある?」と聞く先生もいましたが、ほとんどが一方的に喋って、終わる。こんな授業で学びの姿勢など身に付くわけがありません。そこで文科省が推奨しているのが「アクティブラーニング」ですが、この言葉にあまり囚われないほうがいいです。従来の授業の最後に5分間だけグループで話し合う、初めからグループ学習をするなど、いろいろなスタイルがあります。要は、自分が誰かと話をして、他人の話や意見を聞いて知る機会を持ちながら一つのテーマを考える。物事を考えるにはまず言葉が必要ですから、知識を一方的に聞いてインプットする授業も無駄ではありません。言葉や知識を持ったら、次の段階はみんなで協働して考え、まとめたら発表する。どの授業も従来通りのスタイルでやっているか、一部の授業はグループ形式でやっているか、そのあたりを見極めることが大切です。
―そういうスタイルの授業導入がなかなか進んでいないのですか。
先生の役割がティーチングからファシリテーションへと変化してきています。先生方はその変化を拒んでいるわけではなく、そうなったときに生徒をどのように評価したらいいかでつまづいているといえます。
―〝いい学校〟とはどんな学校でしょうか。
いい学校はたくさんありますよ。その学校に通っている子どもたちにとっていい学校であれば、それがいい学校だと思います。例えば、名門進学校に入学したとしても、勉強する気が全然ないというのでは意味がないです。無理して遠くの学校へ時間をかけて通学するより、近くの学校を選んだほうが良いという場合もあります。電車の中で時間を惜しんで勉強する子ならいいですよ、しないでしょう(笑)。時間の無駄ですね。ご自身の子どもさんが「どんな子なのか?」を考えてください。ですから、「偏差値で選んではダメです」ということを私は言ってきた。受験する学校の〝レベル〟を落とすことをまず親が恥じないこと、いい学校だからそこで頑張ろうと子どもさんに言ってあげること。他人と比べることが人生ではないと、親がまず教えてあげなくてはいけませんね。
―耳の痛い話もたくさんありましたが、親の姿勢が大切だということがよく分かりました。ありがとうございました。
ユーデック教育研究所所長
株式会社ユーデック 情報企画部部長
植田 実 (うえだ みのる)さん
1956年生まれ。関西大学文学部卒業。1982年よりペイドパブリシティの企画・営業・編集に従事。受験情報誌、タウン誌等の創刊にも携わるなか、教育関係のクライアントを多く抱える。2000年、ユーデックに入社。学校案内・受験情報誌等の編集・発行、私立中学高校のコンサルタント業務に従事。他社発行物への執筆も多数。2017年4月、ユーデック教育研究所所長に就任。2017年10月、ユーデックの子会社である㈱晃洋書房の代表取締役に就任。現在に至る
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