6月号
歴史ある洋館と油彩画が生み出す 青栁紀幸の世界
去る4月24日から30日にかけて、芦屋市平田町のギャラリー開雄にて青栁紀幸さんの油彩画展が開催された。ギャラリー開雄は芦屋でも屈指のお屋敷街、平田町に佇む、来年で築百年を迎える洋館。時とともに醸された優雅な雰囲気と、やさしい抑揚をまとったおだやかな色彩の絵画が絶妙なハーモニーを奏で、観る者たちを魅了した。
扉を開けると、淡いグリーンの富士山がお出迎え。よくある白でも青でも赤でもなく、斬新な配色に富士山のイメージを覆される。
重厚な玄関ホールにはフランスの何気ない風景を描いた大きな絵画が飾られ、中でも「サン・ラザール駅」は大胆な構図がひときわ目を惹く。階段部分の展示は絶妙。光の角度によって色あいが微妙に移ろうから、階段を上がるたびに作品がさまざまな表情を見せてくれる。窓から注ぐ陽光に映え、絵画たちは光と戯れているようだ。
ホール脇の小部屋やメインルームにも、大小さまざまな作品が。ホールのステンドグラスを描いた小さな作品もまた、何気なく飾られていた。窓から差す木漏れ日と洋館ならではの温かい照明の2つの光に包まれ、絵画とインテリアが融和しそれぞれの部屋がひとつの空間として完成した作品に。
「壁があるだけの普通のギャラリーとは違い、絵画の配置には相当時間をかけました。空間の雰囲気とか窓や照明の位置とかを考えないといけないので」と青栁さん。搬入は二度にわたったとか。作品の持つファンタジー感が非日常的なこのお屋敷にマッチして、古い建物に新しい絵画が違和感なく溶け込んでいるから不思議だ。スポットライトで作品を照らすだけの美術館と違い、リラックスしながら鑑賞できた。
サンルームでは緑萌え藤の花咲く庭を眺めながら、青栁さんがスケッチブックに鉛筆を走らせていた。ここからまた、新しい作品が生まれるのかもしれない。
ブログ「青ヤギさんからの手紙」
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