2月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第172回
西宮市医師会市民フォーラム
「知って安心!認知症
~最新治療と地域の支援~」について
─恒例の西宮市医師会市民フォーラムですが、2025年はいつ開催しましたか。
栁澤 2025年は10月4日に開催しました。今回もJR西宮駅前のフレンテホールが会場で、定員300名がほぼ満席という盛況でした。
─今回で24回目となりましたが、どんなテーマでしたか。
栁澤 フォーラムでは毎年、身近な病気や医療制度の動向など、市民のみなさまの関心が高い話題を選定していますが、今回は「知って安心!認知症 ~最新治療と地域の支援~」をテーマに、実際に西宮市内で認知症の診断や、認知症の患者さんやその家族のサポートをおこなっている専門家をお招きし、講演していただきました。第一部は認知症の概略、診断、治療について、第二部では認知症の予防や認知症になってからの生活について、みなさんと一緒に勉強させていただきました。
─第一部はどのような講演でしたか。
栁澤 兵庫医科大学精神科神経科学講座講師で、兵庫医科大学病院認知症疾患医療センターのセンター長もされている宇和典子先生が講師を務め、「認知症と最新治療の現状について」を演題に、主に日本の認知症施策と、認知症の最新治療についてお話しいただきました。
─認知症施策については、どのような内容でしたか。
栁澤 2022年の認知症高齢者数は約443万人ですが、2040年度は約584万人と推計されているというデータを示された上で、2023年に成立した認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)について、認知症の人が「社会の対等な構成員として個性と能力を十分発揮できるようにする」という理念があると紹介しつつ、認知症施策推進基本計画においても認知症の当事者の目線に立った基本施策が制定され、中でも「新しい認知症」観が強調されていると解説されました。
─「新しい認知症観」とはどのようなものですか。
栁澤 これまでは認知症になったら何もできなくなると思われていましたが、そうではなく、できることややりたいことをやり、仲間とつながりながら、希望を持って自分らしく、住みなれた地域で暮らし続けていくことができるというあり方だとおっしゃっていました。
─認知症の治療についてのお話は、来場者のみなさまの関心が高かったのではないでしょうか。
栁澤 はい、最新の治療について知る貴重な機会になったと思います。今回特に来場者のみなさまが興味を持たれたのが、認知症の前段階のMCI(軽度認知障害)に適応がある新薬についてでした。MCIの原因として最も多いのがアルツハイマー病で、その初期に脳内に蓄積するアミロイドβというタンパク質を減らす効果のある抗アミロイドβ抗体薬について、宇和先生からそのメカニズムを図を用いて解説していただき、投薬治療のスケジュールや実際に投薬治療を受けられる西宮市とその近隣の病院を紹介していただきました。また、今後は在宅医療で使用できる皮下注射も登場するかもしれないとのことでした。
─予防についてのお話もありましたか。
栁澤 WHO(世界保健機関)が作成した認知症予防のためのガイドラインを提示して、知的活動への取り組みや社会活動などへの参加も重要と解説され、「認知機能の低下を遅らせるには、いまできることに一生懸命取り組むことが大切です」とおっしゃっていました。
─第二部はどんな内容でしたか。
栁澤 「自分らしく生きたい!~認知症とともに暮らすイメージを持ち、備えよう~」と題し、西宮市高齢者あんしん窓口高須認知症つながり推進員の齋藤環さんに講演していただきました。今回は行政が発行している冊子『認知サポートべんり帳』『兵庫県版認知症チェックシート』『その物忘れ、本当に年のせい?』の3冊を会場のみなさまにご覧いただきながら、今日からできる備えと、認知症になってからのことについてお話しいただきました。なお、これらの資料は行政窓口で配付しているほか、西宮市ホームページからもダウンロードできます。ちなみに『認知サポートべんり帳』は西宮市独自の情報冊子で、神戸市では『認知症ケアパス』が発行されています。
─今日からできる備えについてはどんなお話でしたか。
栁澤 認知症についての正しい知識を持ち、症状から「認知症かもしれない」という気づきを得て、予防に取り組むことが大切とのことでした。予防のポイントは「うえきいちだ」だそうです。
─それはどういう意味ですか。
栁澤 「う」は運動管理、「え」は栄養バランスとお口の健康、「き」は休憩・リラックス・睡眠、「い」は生きがい・趣味・社会交流、「ち」は知識と正しい理解、「だ」はダメージを減らすことです。『兵庫県版認知症チェックシート』に載っていますので、ぜひご覧ください。
─認知症になってからの生活へのアドバイスはありましたか。
栁澤 認知症である自分を受け入れつつ、それまでの生活をできるだけ長く続けることが大切で、それを家族など周囲の方も理解、気づかい、見守り、助け合いで支えてくださいとのことでした。また、認知症を正しく理解し、人と交流し、地域の人たちの助け合いがあれば、認知症になっても自分らしく生きることができると力説されていました。誰もが認知症になる可能性がありますので、読者のみなさまにも自分事として考えていただきたいですね。
─2026年もフォーラムを開催しますか。
栁澤 もちろん開催する予定です。日程やテーマが決まり次第、西宮市医師会ホームページなどでご案内しますので、ぜひご来場ください。

第24回西宮市医師会市民フォーラムは、実際に西宮市内で認知症の診断や、認知症の患者さんとその家族のサポートをおこなっている専門家をお招きして開催された

第一部で「認知症と最新治療の現状について」を演題にお話しされた宇和典子先生。兵庫医科大学精神科神経科学講座講師で、兵庫医科大学病院認知症疾患医療センターのセンター長もされている

第二部で登壇した、西宮市高齢者あんしん窓口高須認知症つながり推進員の齋藤環さん。行政が発行している3冊の冊子を会場のみなさまにご覧いただき、今日からできる備えと、認知症になってからのことについて講演していただいた

認知症予防のポイントは「うえきいちだ」。「う」は運動管理、「え」は栄養バランスとお口の健康、「き」は休憩・リラックス・睡眠、「い」は生きがい・趣味・社会交流、「ち」は知識と正しい理解、「だ」はダメージを減らすこと












