2月号
今月の映画と本
差別を嫌い、平和を願った
魂の歌声と陶酔のリズム
『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ
レゲエ・サンスプラッシュ デジタルリマスター』
映画館で上映されるのは、近ごろ映画だけではなくなっている。コンサートや演劇、オペラをライブビューイングで楽しめるようになっているのだ。スクリーン、大音量、家で観るよりずっと臨場感がある。
今月は、改めて認識されている映画館の魅力を、ぜひ音楽映画で味わってほしい。臨場感はもちろん、映画なら時代を自由にさかのぼることだってできる。
本作は、1979年ジャマイカで行われたボブ・マーリーのラストライブを映像化したライブ・ドキュメンタリー。“レゲエの神様 ” と呼ばれ、アルバム・セールスは全世界で7500万枚以上、彼を敬愛するアーティストも多い。なぜ、彼は歌うのか。カラフルで雑多な風景、気だるさを感じる町の中で、彼の発する言葉は強く揺らぐことはない。36歳で亡くなったボブ・マーリーは、すっかり年下になってしまった。拳をあげ歌う姿に、若い頃とは違う感情が新たに生まれた。
『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ
レゲエ・サンスプラッシュ デジタルリマスター』
出演:ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ、ピーター・トッシュ、
バーニング・スピア、サード・ワールド
監督:ステファン・ポール
原題:Reggae Sunsplash
配給:アルバトロス・フィルム
© 2022 Stefan Paul All Rights Reserved
2024年2月9日(金)より全国ロードショー
公式サイト
灘区出身のオカルトコレクターが綴る
神戸の怪談
『神戸怪談』
「友だちの友だちが体験した話なんだけどね…」。
子どもの頃から、怖い話を何百回と聞いてきた。本当にあったように話すのが怖さを盛るコツ。昭和の時代には、『あなたの知らない世界』という心霊番組があって、大人が真面目に怖い話をしていた。髪の毛が伸びる日本人形、夜中に現れる座敷童子。あのドキドキは忘れられない。
怪談からしばらく遠ざかっていた大人の皆さんへ、本気の怪談集をオススメしたい。著者は神戸市灘区出身。実際に本人が訪れたり体験したり、周囲の人から聞いた実話だけをまとめている。中央区、灘区、東灘区、垂水区、兵庫区…。神戸市民なら「あ、あの辺りね」とわかるよう地名をはっきり明記しているのは嘘がないからこそ。
街も人間と同じ、美しい面もあれば、不思議な面、恐ろしい面もある。あなたの知らない神戸がここにある。
『神戸怪談』
著者:田中俊行
定価:本体710円+税
竹書房
text.田中奈都子