8月号
ビアンヴニュ・大下さんと歩く
KOBECCO パンさんぽ|Vol. 07 対談
ブーランジェリー クスパン 楠田 法久さん✕ビアンヴニュ 大下 尚志さん
対談 ブーランジェリー クスパン 楠田 法久さん ✕
ビアンヴニュ 大下 尚志さん
楠田 久しぶりだね。SNS見てましたよ。大下さんらしく、いろんなこと考えて元気にしてるなって思ってたよ。
大下 ありがとうございます。真面目に作ってることが伝わればいいなと思って発信してるんです。この数年はほんと色々考えましたよね。
楠田 考えたよね。正解がわからないからね。でもある時、妻と話したんですよ。「これまで通り正直にやろう」って。これはお店を始めた時に妻と決めたことで、何があっても変わらない僕らの信念。その確認ができた感じです。
大下 楠田さんの生き様そのものですね。
楠田 だってお客さんが来てくれるんだもん。大下さんと一緒。真面目に作らないと。真面目に正直に。
お客さんが来てくれて、一言二言、喋っていくんですよ。僕、作業を中断して聞いてるの。パン早く成形したいのに話が終わらない時もあって、焦ってくるんだけどね(笑)。でもパンよりお喋りをとりたい。なんか…大手のパン屋との違いってそういうところでしょ。
大下 そうですね。でも成形も大事ですよ(笑)。
お客さん、来てくれますもんね。僕らのところにわざわざ。顔が見える、直接話せるのって幸せだなって感じます。
楠田 この人たちのためにパン作ってんだな、ってね。
大下 パン屋さんって行きます?
楠田 行くよ。パン屋、好きだもん。イスズベーカリーのトレロンが好きなんですよ。
大下 あ、僕も。っていうか、みんな好きでしょトレロン(笑)。“神戸の”イスズベーカリーだからね。
楠田 今、3代目ですもんね。新しいパンもどんどん出るけど、味はブレない。守るって難しいことだと思う。進化し過ぎないイスズでいてほしいよね。
大下 クスパンの進化は?
楠田 進化はしなくちゃいけないと思ってます。お客さんの求めているパンをおいしく作れるように。今年、10数年ぶりにコンテストに出ました。国際大会は年齢制限があって出られないんだけど、でも『BAKERY JAPAN CUP』は還暦の僕でもOK。参加者で最年長。これが僕の進化です。
大下 コンテストって体も気持ちも、正直しんどい。普通の60歳は出たくないですよ(笑)。高く評価してもらえたら嬉しいけど。でも楠田さんの目的はそこじゃないでしょ。
楠田 そりゃあ僕だって勝ちにいってますよ。優勝したい。でもそうだね、それがメインじゃないね。コンテストの準備も当日もずっと幸せ。決勝に残って、みんなの前で作ってる時はサイコーに気持ちよかった。「この時間がずっと続いたらいいな〜」って思ってた。それと挑戦する自分に酔う自分もいるの。「今オレ、カッコイイ」って(笑)
大下 ミュージシャンみたい(笑)。やっぱり、生き様ですね。
楠田 パン屋という仕事が好きなんですよ。お客さんが「おはよ」って言ってくれて、なんか色々喋ってくれて、小さい子が手振ってくれたり、グータッチしてくれる(笑)。お客さん来てくれなかったら、パンが作れないですもん。ふつうのね、町のパン屋でいたいです。
大下 垂水と御影の「ふつうにおいしい、ふつうのパン屋」でいましょう。
休みの日も厨房にいます。
パンといる時間が1番リラックスできるから。
ブーランジェリー クスパン
楠田 法久さん
『全粒粉100』の食パンは、健康志向の人が増えたからでしょうね、リクエストが5~6人からあって、それで作ったんです。全粒粉は今並んでるパンでも使ってることや、100%にすると硬くて食べにくくなるってことを説明するんだけど、みなさんそれでも欲しいって言う。だから「じゃあ、おいしい全粒粉100を作ろう!」ってがんばりました。『穀物食パン』も同じような経緯。こっちは兵庫県産もち麦が入っています。
「健康のためにパンを食べたい」って、すごく嬉しいこと。おいしく作るのは僕の仕事です。
ブーランジェリー クスパン
神戸市垂水区神陵台8-1-9 新和ビル1F
TEL.078-782-8660
9:00~18:00
水・木・日曜休み