8月号
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関西を代表する芸術祭を目指して新たなステージへ
六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond
「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」が8月26日(土)~11月23日(木・祝)、
六甲山上9カ所の会場とエリアで開催される。6月23日、梅田サウスホール大ホールで開催概要が発表され、
登壇者がそれぞれの立場で新たなステージに向けての期待や意気込みを語った。
六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond
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昨年の周遊イメージ 名村可奈子《山頂の遊具》
兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)
表現の向こう側にあるものとは?
総合ディレクター 高見澤 清隆さん
今回は初めてテーマを設定しました。「表現の向こう側(にあるもの)」。社会には、意見や現象の表層を見てジャッジして扉を閉ざす風潮があります。生活の中で感じているものとは違う現代アートの価値観に対して「分からない」とシャッターを下ろさず、「これは何なんだ?」「意図は?」と考えてみようというメッセージを込めています。テーマをイメージしたロゴマークと、あわせてメインビジュアルも一新しました。
招待アーティストを拡充し、有馬在住で六甲山を知り尽くしている椿昇さん、パリを拠点に活躍する川俣正さん、神戸を中心に先進的な活動をするグループArtist in Residence KOBE(AiRK)など国内外で活躍する32組です。また芸術祭の象徴となる拠点を「ROKKO森の音ミュージアム」に置き、中庭のSIKIガーデンを拡張して野外アート作品展示ゾーンを新設しました。かつて六甲山で使われていた御影石を使う三梨伸さんの作品をはじめ全4点の彫刻作品を展示し、一部作品は会期終了後も常設します。各会場をつなぐトレイル沿いには川俣正さんの六甲山の間伐材を使う作品をはじめ全7点を置き、山道を歩きながら楽しんでいただけます。また、今回はこどもたちが現代アートに触れ合える機会の創出に力を入れていこうとしています。
六甲山上全体がもっと行きたくなる場所に
京都芸術大学 美術工芸学科教授 現代美術家 椿 昇さん
地方の芸術祭は日本独特の発明です。日本人の生き方や暮らし方にとって必要なものなのに、あまり日が当たりません。これはおかしい。六甲ミーツ・アートが持っている深い哲学的な意味を訪れる方にちょっとでも理解してもらえたらいいなあと今回初めて作品を出します。私は瀬戸内芸術祭で小豆島を担当して、まずお願いしたのが光ファイバー敷設でした。久元市長のお話を聞き「これはいける!」と思いました(笑)。
考え方によって自然は作り変えられるし、未来も作り変えられて良い方向へ持っていけます。私たちのQOLや未来を考える場として六甲山が担う責任は大きく、六甲ミーツ・アートの発展には大きな意味があります。このポテンシャルを生かさない手はない。単にアートとして捉えるのではなくちょっと違う切り口で見てもらえたら〝beyond〟かなと思います。
私にとって六甲山は〝庭〟のようなもの。まだまだブラッシュアップできるはずです。六甲山上全体がもっと行きたくなる場所になることを願っています。
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昨年の周遊イメージ 二ノ宮久里那《Transience》六甲有馬ロープウェー 六甲山頂駅
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右から
阪急阪神ホールディングス株式会社 代表取締役会長 グループCEO 角 和夫さん
京都芸術大学 美術工芸学科教授 現代美術家 椿 昇さん
神戸市長 久元喜造さん
阪神電気鉄道株式会社 代表取締役・社長 久須 勇介さん
六甲山観光株式会社 代表取締役 寺西 公彦さん
総合ディレクター 高見澤 清隆さん
2025年 大阪・関西万博に向けて
阪神電気鉄道株式会社 代表取締役・社長 久須 勇介さん
弊社は100年近くにわたり山上レジャーのパイオニアとして六甲山の活性化に努めてまいりました。2025年には大阪・関西万博が開催されより多くの観光のお客様が来られます。六甲ミーツ・アートを六甲山のコンテンツとしてアピールし沿線の活性化につなげたいと考えております。
六甲山観光株式会社 代表取締役 寺西 公彦さん
六甲山上の活性化は弊社の使命だと考えております。その一つが六甲ミーツ・アートです。2010年から規模を拡大しながら毎年開催し、参加いただいたアーティストの熱意、関係する方々のご支援、来場いただいた皆様のお陰をもちまして14年目を迎えました。「関西を代表するアートイベントに成長させる」と思いを新たにしております。
神戸市長 久元 喜造さん
バブル崩壊後、少しずつ佇まいを変えてきた六甲山が活気を取り戻す契機の一つとなったのが六甲ミーツ・アートです。私は数年前に初めてお邪魔をして、自然の中で鑑賞できるロケーションと設え、作品のレベルの高さとアーティストの熱意に大きな感銘を受けました。神戸市としても六甲山活性化のために遊休施設の再利用や光ファイバー敷設など新たな施策を推進しております。大阪・関西万博、神戸空港国際化を控えたこの時期、より充実させ規模を拡大することには意義があると考えております。
阪急阪神ホールディングス株式会社
代表取締役会長 グループCEO 角 和夫さん
関西へ来られるインバウンドの観光客は大阪ミナミや京都へ行ってしまいます。瀬戸内海をもっと活用して神戸という素晴らしい観光資源を生かせないのかという思いをずっと持っていました。そんなときに六甲山の自然の中で現代アートに触れる芸術祭が始まり、今回はグレードアップしました。今後も毎年、発展させていっていただきたいと思っております。
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昨年の周遊イメージ
kammy+OK!《六甲山の乳搾り》
六甲ガーデンテラスエリア
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髙橋匡太≪ひかりの実in SIKIガーデン≫
2021年 ROKKO森の音ミュージアム
写真:村上美都
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椿 昇
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三梨 伸
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中㟢 透
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川俣 正
Photo: Gallery Kamel Mennour,
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Artist in Residence KOBE(AiRK)
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昨年の周遊イメージ 村山大明《アセビの切り株と想望》ROKKO森の音ミュージアム