8月号
ホテルニューアワジグループが挑む観光業の姿
ホテルは地域文化のショーケース
新型コロナ感染症が5類へと移行し、観光業にも活気が戻ってきた。今夏はJR西日本の兵庫ディスティネーションキャンペーン、2025年には大阪・関西万博、神戸空港の国際化など、新たなフェーズを迎えようとしている。
関西圏で16ものホテル事業を展開するホテルニューアワジグループの記者発表会が7月14日に開かれた。
株式会社ホテルニューアワジ・代表取締役社長の木下学さんが語る取り組みと今後のビジョンについて、記者発表会の内容を抜粋してお伝えします。
ホテルニューアワジ
グループを取り巻く環境
2023年の7月以降ホテルニューアワジグループでは、コロナ禍前の2019年度同月比で、およそ120%の勢いの予約が入っています。JTBによる2022年度「サービス最優秀旅館・ホテル」の「大規模施設・旅館部門」で最優秀旅館に「ホテルニューアワジ」が選出されたことも大きいと思います。受賞の背景には、コロナ禍の密を避け車で行けて、温泉や自然、美味しいものがあり、人も優しい淡路島の魅力があったからこそ。現在の評価だけではなく、創業以来関わってくださった全ての人たちが積み上げてくれた結果であり、現状に決して慢心せず、今後、圧倒的に高くなるお客様の期待に応えるべく、しっかりと精進をしていきます。
現在、淡路島への観光者は、関西圏からのお客様が約8割。旅先が都市部から田舎へと確実にシフトしている今、関西の中の淡路島、瀬戸内の中の淡路島として、関係機関と連携し全国、世界から来ていただけるレベルに上げていかなければなりません。集客だけを優先するのではなく、淡路島の美食が生まれた背景を語れる人材の養成に力を入れ、お客様に淡路島の良さを伝えられるよう、社員の育成に取り組んでいます。
ホテルニューアワジグループの新たな取り組み
従来の人の集約型サービスから脱却し、価値ある空間づくりが重要と考えています。淡路島の食をより楽しみ、食の時間をより良いものにしていく。その取り組みのひとつとして「淡路島ワイナリー(淡路島ワイングロワーズクラブ)」とパートナーシップを締結し、自前のブドウ畑を整備しました。淡路島の気候にあった品種を育て、日本料理にも合うおいしいワインを作ります。土と風は、観光と食に大きな影響を与えてくれます。淡路島はいい風が吹くから、そうめんや線香、ワインが作れる。土も多様で水はけのいい土、粘土質の土があるから、野菜など食の多様化ができる。味は絶対的なものではありません。おいしく感じるには、地域の顔がみえることが大事だと考えています。
アクセス面では、洲本温泉にヘリポートを設置しました。大阪・関西万博で注目されている「空飛ぶクルマ」にも対応し、関西空港や神戸空港、瀬戸内の島々とも結ぶ計画です。
施設面の充実も図っています。兵庫県が推進しているユニバーサルツーリズムに参画し「ひょうごユニバーサルなお宿」宣言施設として、ニューアワジグループの12施設が認定されました。一例として、20数年前から始めていた「バリアフリーの家族風呂」をアップグレード。障害をお持ちの方も気兼ねなく旅をしてもらえる環境をつくり、3世代で安心して楽しめる「新しい家族の旅」をテーマにリゾート作りを進めます。
「海のホテル島花」では、夏の2カ月しか稼働していなかったプールにサウナとジャグジーを設置し、1年を通じて楽しめるレジャー施設に改装しました。さらに2艇目のクルーザーを稼働。宿泊をメインにしながら、和歌山マリーナシティなどと連携し、日帰りオプショナルツアーの販売を開始し、大阪・神戸方面のマリーナとの送迎サービスも計画しています。「ホテルニューアワジ別亭 淡路夢泉景」では、趣の異なる2つの貸切温泉「月あかりの湯」「なごみ湯」をリニューアルオープン、「ホテルニューアワジ」ではヴィラ楽園に新客室「朝陽の庭」を新設し、新レストラン「食の房 新水」もオープンいたしました。
さらに、滋賀県彦根市にウェルネスリゾート「蒼の湖邸 ビワフロント彦根」を8月20日にオープン、昨年12月には京都で2軒目となる「Hotel 侑楽 京八坂」が開業し、続いて2024年には京都で3軒目の施設を予定し、兵庫県外でも淡路島の魅力の発信に努めてまいります。
これからの淡路島観光と
ホテルの役割
観光業には、魚や野菜などの「消費の出口」としての役割があります。観光業が観光業のことだけを考えていてはいけません。地域の一次産業などをしっかり支えていく必要があります。「淡路島3年とらふぐ」のようなブランディングもそのひとつです。淡路島の観光は、大阪・関西万博にあわせて「ひょうごフィールドパビリオン」を中心とした「AWAJI・島博」の開催、淡路花博25周年記念の「花みどりフェア」など、来てもらうための仕掛け作りがあります。淡路島の観光資源は、日本一のシェアを誇るいぶし瓦や線香の他、国生み神話の歴史ロマンを裏付けるかのような松帆銅鐸の出土、明石海峡大橋の登頂体験、明石海峡大橋や大鳴門橋のサンセットクルージング、大鳴門橋の自転車道整備、アニマルセラピー(モンキーセンター、ホースセラピー、ドルフィンファーム)などまだまだたくさんありますが、生かし切れていません。
ホテルは地域文化のショーケース。淡路島の魅力のPRが大切です。泊まった時の印象は、接客で変わることを忘れてはいけません。