3月号
SPIGOLA(スピーゴラ) 対話から生まれる靴
~100年後まで残したい、メイド・イン・KOBEの逸品~
ビスポークと呼ばれる完全注文靴のスペシャリストが神戸・長田に存在する。日本におけるビスポークの第一人者で、世界各国にファンを持つビスポーク靴ブランド「SPIGOLA」。その代表で靴職人の鈴木幸次氏にオーダーメイド革靴の魅力を聞いた。
SPIGOLA 代表 鈴木 幸次氏
【プロフィール】1976年神戸市生まれ。神戸・長田の婦人靴パタンナーの父親のもとで腕を磨き、22歳の時に自身のパターンオーダーブランドを作りたいとイタリアへ。フィレンツェでウゴリーニ氏と出会ったことで、手縫い靴の製作へ転向を決意、同氏に師事。2001年に帰国し、地元長田で「SPIGOLA」を設立。神戸からビスポーク界を牽引し、今や国内のみならず海外でも高い評価を得る
それぞれの理想の一足
ビスポークの良さは?「スピーゴラ」の鈴木幸次氏が質問に答えてくれた。「靴に求める価値は人それぞれで違います。履き心地や実用性を求める人もいれば、見栄えやオリジナリティを重視する人もいて、各々のベクトルで理想の靴を注文できるのがオーダーメイドのいいところ」。
be spokenの語源が示す通り、職人が注文主と会話を重ね、理想とする靴を作り上げる。最初から仕様が決まっている既製品と違い、こだわりをカタチにしていく、そのモノづくりの過程を含めて満足を感じてもらえることが、ビスポークの魅力と鈴木氏は言う。
ハンドメイドに惚れる
鈴木氏がビスポーク靴を知ったのは、26年前のイタリアへの渡航がきっかけだ。そこで靴職人のロベルト・ウゴリーニ氏と出会い、氏がつくる手縫い靴を目のあたりにして衝撃を受ける。自身が技術を磨いてきた長田では分業制の工場生産がメイン。「靴を手で一からつくりあげる発想がなかった」。フルハンドメイドの靴づくりに興味を持った鈴木氏は、ウゴリーニ氏に弟子入り。師匠からは靴づくりの技術と顧客のために諦めない情熱を、そして地元イタリアの伊達男達からは粋なセンスも吸収。3年の修業を経て2001年に帰国し、自らのビスポークブランドを始動。口コミで話題となり、神戸から全国へと人気が広がっていった。
今と未来に価値ある靴
独自のカッティングやフォルムなど、鈴木氏がつくる靴はオーラがある。「一番心掛けているのは履き心地です。時間をかけて足に馴染ませるのではなく、最初から快適に。見栄えが良いからといって足が痛くなるようなデザインでは、靴としての正しいあり方を損なっていると思う」。
めざすのは、100年後まで残る靴。「私がこの世から居なくなっても、“スピーゴラの靴っていいね”と、皆の心に残っていく作品を作りたい」。耐久性のスペックだけではない。愛着を持って履き続けてもらえる魅力づくりが大切。だからこそ常に新境地を模索し、努力し続けるのだと。
日本はもちろん、NYや香港など海外にも熱烈なファンを持つ。トランクショーで出会う多くの外国人が東京同様、神戸のことも知っていることに驚いたという。「実は30歳後半まで東京へ進出するか迷っていたのですが、今では神戸に工房を構えてよかったと思う。人が集まる東京は常にテンションを張り詰めていなければならず、キツイ」と笑う。
モノづくりには“休むこと”も大事。アウトドア好きなこともあり、自然が身近で心休める環境がある神戸への愛着が年々深まってきているそう。「神戸産の靴をもっと多くの人に履いてほしい。それぞれが自分にとっての“理想の靴”を思い浮かべ、発見してほしいですね」。
鈴木氏が言う通り、さまざまな靴の選択肢がある神戸で、目的や装いにあわせて“理想の靴”を選ぶ楽しみを。靴職人や店の人と対話して、新しい靴と新たなシューズライフを見つける時間を持ってみてはいかがだろう。
SPIGOLA
神戸市長田区細田町5-2-16
078-641-1343
10:00~19:00
日曜定休
ビスポーク:¥385,000~、
もう少し気軽にトライできる
パターンオーダー:¥198,000~、
プレタポルテ:¥98,000~も用意
https://www.spigola.jp/