3月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第140回
伊丹市医師会市民健康フォーラム「みんなの感染症対策」について
─伊丹市医師会は市民フォーラムを毎年開催していますね。
和田 平成14年度にスタートし、昨年で第20回を迎えました。基本的に1年に1回開催していますが、コロナの影響で昨年は3年ぶりの開催になりました。毎回テーマを設定していますが、前回は認知症、その前はロコモティブシンドロームなど、市民のみなさまに知っていただきたい身近な病気や日々の健康づくりなどのことについて、講座形式のプログラムでご紹介しています。講師は伊丹市医師会に所属する市内の開業医の先生や、市内の公立病院である市立伊丹病院や近畿中央病院の先生、市の関係機関の担当者などにお願いしています。
─昨年のテーマは何でしたか。
和田 やはり市民のみなさまは新型コロナウイルス感染症に関心が高いので、「みんなの感染症対策」としました。一方で、感染症は新型コロナウイルスだけではありません。コロナ禍で見落とされがちな感染症もありますので、そのあたりにも注意していただけるような内容を考えて企画しました。
─いつ開催し、どのようなプログラムでしたか。
和田 昨年の10月15日に、東リいたみホールの大ホールで開催しました。プログラムは4つの演題で構成し、それぞれの専門家の方々にお話していただきました。
─最初の講演はどんなお話でしたか。
和田 巽医院院長の巽憲一先生に、「体調の調べ方と感染症対策」と題しお話いただきました。体温や血圧は健康管理の基本ですが、測り方によって数値が違ってきますので、正しい測り方を教えていただきました。感染症対策については、みなさん意外と正しくマスクを着用していないという指摘がありました。一般的な不織布のマスクには表裏があるそうで、開いたときにヒダが下を向くようにして、鼻とあごが隠れるように着けましょうということでした。
─2番目の講演はどんな内容でしたか。
和田 伊丹市立保健センターで予防接種を担当する尾嶋直子さんに、予防接種を受ける際の注意点などを「安全に予防接種を受けるために知っておきたいこと」という演題でお話いただきました。肺炎球菌ワクチンや子宮頸がんワクチンなどを例に挙げ、接種を受ける際の注意点や副反応の症状とそれに対する備え、予防接種後健康被害救済制度など、予防接種に関する総合的な内容でした。接種の際の問診票はいろいろと記入欄があり煩雑だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、医師に健康状態を伝えるための大切な資料ですので、副反応を避けるためにも正しく記入してほしいとのことでした。
─続いて、コロナ以外にも怖い感染症があるというお話だったそうですが。
和田 市立伊丹病院感染対策室主任部長の木下善詞先生に、「新型コロナの陰で見逃される“要注意”な感染症」というテーマでお話いただきました。このようなご時世ですので、発熱=コロナと思いがちですよね。また、いわゆる「かぜ」症状も軽く考えてしまうことがよくあるでしょう。でも、コロナ以外にも発熱する病気は、インフルエンザを含めてほかにもたくさんありますし、患者さんが「かぜ」と表現する体調の変化と医師が考える風邪の定義、つまり自然寛解するウイルス性の上気道感染症の症状は必ずしも一致する訳ではないとのことです。つまり、患者さんが「かぜ」だと思う症状が、実は重大な疾患のサインである可能性もあるので、安易に自己診断しないようにしましょうとお話されました。また、怖い感染症の1つに結核がありますが、決して過去の病気ではなく、日本ではいまも年間1万人以上が発症、2千人近くが亡くなっており、感染に気づかずまわりに広げてしまうこともあるので気をつけましょうと注意をよびかけられました。
─最後の講演はどんなお話でしたか。
和田 「新型コロナウイルス感染症」という題目で、近畿中央病院副院長の上道知之先生にお話いただきました。データを基にして新型コロナウイルス感染症の発生状況の推移を振り返りつつ、症状、検査や治療のこと、予防やワクチンについて、症状がある場合や濃厚接触者になった場合などの対応方法など、コロナに関する情報を総ざらえしていただいた感じです。いまだ感染は続いていますので、引き続きマスクの着用、こまめな手洗いや手指消毒、密を避けるなどの基本的な予防対策を継続していただきたいですね。
─会場のようすはいかがでしたか。
和田 今回は3年前の前回と比べるとずいぶん少なかったですけれど、それでも150名ほどの市民の方々にご来場いただき、みなさん熱心に耳を傾けていましたので、関心の高さがうかがえました。
─伊丹市医師会市民フォーラムは今年も開催しますか。
和田 はい、また秋に開催する予定です。まだ日時やテーマは調整中ですが、夏頃に伊丹市医師会のホームページや、市内のクリニックやショッピングセンターほかに掲示するポスターなどでご案内いたします。入場無料ですので、あらかじめお申込の上、みなさまお誘い合わせの上ぜひご来場ください。