2月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第139回
明石市民フォーラム「どうなる?医療と介護 終のすみかはどこですか?
Part2 ~ポストコロナを見据えて~」について
─明石市民フォーラムはすっかり恒例になっていますね。
田中 昨年で24回目を迎えました。と言うことは、24年にわたり開催している訳なんですね。よく明石市医師会はひと味違うと、医師からも市民からも高い評価をいただいているようなんですが、市民フォーラムもその大きな要因のひとつだと思います。と言いますのも、この市民フォーラムはまさに市民とのコミュニケーションの場なんです。また、市民のみならず行政、例えば市役所や保健所などの方にもご参加いただきますから、明石市医師会と明石市とのコミュニケーションの場にもなっているんですね。継続することで関係が深まり、有事の際に非常にスムーズに動く訳です。
─特にこのコロナ禍では医師会と行政の連携は重要でしたね。
田中 フォーラムを通じ、明石市医師会は行政のキーパーソンと信頼関係ができています。今回のキーは保健所でしたが、あらかじめ密にコミュニケーションしていたので、迅速にお互い助け合うことができました。すなわち、日頃の明石市民フォーラムから、市民を含め、有事の際のチームプレーが生まれたということですね。楽しみながら医療のこともわかり、そして有事の際には自然と「チーム力」になる、そんな会なのですよ。
─2022年のフォーラムはどんなテーマでしたか。
田中 10月1日に明石市立市民会館中ホールで開催し、多くの市民のみなさまにご来場いただきましたが、今回は「どうなる?医療と介護 終のすみかはどこですか? Part2 ~ポストコロナを見据えて~」と題し、時代とともに増えた選択肢をみんなで考える会になりました。
─どのようなプログラムでしたか。
田中 基調講演、紙芝居、シンポジウムの3部構成でした。まず、橋本彰則明石市医師会会長が主宰者を代表してあいさつし、泉房穂明石市長にもごあいさつをいただきました。泉市長は子育て政策で有名ですが、実は高齢者対策も子育て対策と一体であるとのお話でした。
─基調公演はどんなお話でしたか。
田中 あかし保健所副所長の宮村一雄先生に、「明石市のコロナ禍の現状について」をテーマにわかりやすくお話いただきました。当初は2~3%が致命的となり恐れられていたコロナ感染も、ワクチン接種やオミクロン株への変異で死亡率が低下し、危険性がインフルエンザと同等のリスクへと下がりつつある現状で、実際に明石市でも一昨年夏の第5波以降、65歳以上の死亡率が顕著に改善されているそうです。しかし、だからといって安心せず、手洗いや咳エチケットなどの基本的な対策のほか、万一感染した際のための水や食料の備蓄、不安をあおるマスコミに振り回されないような冷静な対応など、今後のコロナとの付き合い方にもふれられました。そして、元気なうちに「もしもの時」について家族やかかりつけ医と事前に相談する「人生会議」をすすめられました。
─紙芝居はどんな内容でしたか。
田中 コロナ禍でやむなく在宅での看取りとなった例を3例紹介しました。
─シンポジウムはどのような内容でしたか。
田中 紙芝居の内容を受けて、「終のすみかを考える:コロナ感染を経験して感じたこと」をテーマに、基調講演をされた宮村先生、明石市立市民病院総合内科部長の阪本健三先生、鈴木内科クリニック院長の鈴木光太郎先生、地域総合支援センターの赤松みどり所長をパネリストに迎え、私が座長となって進行いたしました。コロナ対応において中心的な役割を担った保健所について、宮村先生は明石市が中核市になったことで事務権限が強化され、市役所の支援を受けやすくなって大いに助かったとおっしゃっていました。阪本先生は明石市立市民病院が現在も面会禁止である理由に、一時期の面会緩和によって院内で経路不明のコロナ感染が発生したことを挙げられました。また、在宅介護における感染対策は、マスクを含めた頭部の防御が重要というアドバイスもありました。鈴木先生は在宅医療の立場から、施設の選定には相性が大切なので、より自分に合った施設を選ぶべきとお話されました。赤松所長は医療と終のすみかとの橋渡しを担う立場から、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅といった施設それぞれの特徴をわかりやすく解説され、「人生会議」で困ったことがあったらとりあえず地域総合支援センターに駆け込みましょうとのことでした。
─終のすみかを選ぶにあたり、大切な事は何でしょう。
田中 看取りを迎える場所は現在、病院が8割、在宅が1割で介護施設が増加傾向にあり、終のすみかをさまざまな選択肢から選べる時代になっています。自由度が高いことは良いことですが、逆に最適を判断することは重荷にもなりかねません。まずは元気なうちから「人生会議」などで、家族やかかりつけ医などと話し合いながら自分らしい生き方を見つめ、それにふさわしい終のすみかを選ぶことではないでしょうか。その選択に応えるためにも、医療と介護の連携をより強めて、希望に添った環境を選ぶことができる明石市でありたいですね。
─明石市民フォーラムは今年も開催しますか。
田中 はい。前述のようにフォーラムは医師会、行政、市民の大切なコミュニケーションの場でもありますので、今後も継続していきます。テーマや日程は未定ですが、決定次第明石市医師会ホームページ等でお知らせします。ぜひご来場ください。