2022年
11月号
11月号
竹中大工道具館 叡智の彼方へ|第二回|
古代の造形力
法隆寺五重塔
二十分の一模型
常設展「歴史の旅へ」コーナー中央に立つこの模型は、法隆寺五重塔(飛鳥時代建立)を二十分の一縮尺で再現した建築模型です。宮大工・小川三夫棟梁らによって約二年半もの歳月をかけて製作されたもので、木組や内部構造、飾り金具など細部に至るまで再現されています。この模型は背面側から中の心柱を覗き見ることができます。ぜひとも実物にて内部の様子をご覧ください。
ところで飛鳥時代の人々は一体どうやってこのような木造建築を作ったのでしょう?
製材鋸がまだ日本にない時代、人々は大きな丸太をクサビやノミで割って製材し、チョウナではつって角材や板材を得ていました。打ち割った材は分厚く不均一ですから、それを目的の寸法に削る作業は大変な労力だったことでしょう。
材木の目に触れる部分は、長い柄に笹の葉状の刃を付けた「ヤリガンナ」できれいに削って仕上げられていました。ヤリガンナは現在の台鉋とは違い、平たい面でも丸い面でも削ることができます。法隆寺五重塔ほか飛鳥時代の建築は胴張りの柱、雲形の肘木など曲線を多くもちますが、自由で伸びやかな古代の造形はヤリガンナのような道具があってこそ生まれたのかもしれません。
(学芸員・植村昌子)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/