6月号
元町映画館 vol.6|終わらない戦争の内実
ドンバス”DONBASS/ДОНБАСС”(2018年 ドイツ、ウクライナ、フランス、オランダ、ルーマニア 121分)
2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、ウクライナ市民から暴力的に大事な家族やコミュニティ、その日常を奪い、街を破壊し続けている。元町映画館では、5月に平和への祈りを込めて上映した『ひまわり』に続き、ドキュメンタリー「群衆」シリーズで知られるウクライナの映画監督、セルゲイ・ロズニツァが2018年にカンヌ国際映画祭《ある視点》部門で監督賞を受賞した『ドンバス』を、緊急上映する。
舞台は、2014年より戦争状態が続く、親ロシア派勢力の「分離派」が実効支配するウクライナ東部のドンバス地域。不条理劇を積み重ねることで、終わらない戦争の内実を見事にあぶり出し、現在の状況を予見しているかのようだ。自作自演のフェイクニュース制作現場と地下シェルターでニュースに見入る避難者。軍による分離派兵士への懲罰とウクライナ義勇兵への現地民衆によるリンチ。散りばめられたエピソードを頭の中で呼応させると、全体主義を煽るプロパガンダや憎悪の増幅で排他的土壌を醸成し、戦争協力を促す支配者側の思惑に改めて気づかされる。戦争が他人事ではない今、立ち止まって考える機会を与えてくれる作品だ。
(江口由美)
『ドンバス』“DONBASS/ДОНБАСС”
監督・脚本:セルゲイ・ロズニツァ
出演:タマラ・ヤツェンコ、ボリス・カモルジン、トルステン・メルテン、アルセン・ボセンコ他
配給:サニーフィルム
元町映画館にて6月1日(水)より17日(金)まで上映
<その他の注目作>
5月に開催したイスラーム映画祭に続き、イスラーム圏のバングラデシュより、衣料品工場で働く若い女性従業員たちが労働組合設立のために立ち上がる姿を描いた『メイド・イン・バングラデシュ』を上映します。
元町映画館
神戸市中央区元町通4-1-12
66席+1(車椅子)
TEL.078-366-2636
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