2022年
6月号
6月号
神戸のカクシボタン 第一〇二回 イラストレーター・西山アユミの遺作を動画化 『コロコとお月さま~命のおはなし~』
今年初め、七回忌を終えた従兄弟の遺品から大量の原画が見つかった。調べたところ特別な思いが詰まった作品だと知る。故・西山アユミは1972年、神戸市垂水区生まれ。幼少期から絵画の世界で頭角を現し東京造形大学デザイン学科卒業後、イラストレーター・立体造形作家として活躍した。緻密な描写とユーモア溢れる作風で人気を博しNHKの番組キャラクターをはじめ児童図書の分野で数多くの作品を残している。2012年には『インターナショナル・イラストレーション・コンペティション』において少女をモチーフにしたキャラクター『コロコ』で最優秀賞を受賞。同時期に念願だった自社スタジオ完成と妻の妊娠を知る。
喜びを形にしたいとコロコを主役にした童話制作を着手。しかし、我が子誕生の2カ月前に自宅で腹痛に襲われ急逝。わずか一日の出来事だったが帰らぬ人となった。2歳年上であったが幼少期から「あーちゃん」と呼び、亡くなる直前まで連絡を取り合う仲だった。私の方で人生最後の日まで描き続けた作品を預かり動画化することにした。今春、各所に協力を依頼し『コロコとお月さま~命のおはなし~』が完成した。
元町の喫茶店前で「またな」と軽い言葉で手を振り、瀬戸内の星になった西山アユミ。予期せぬ遺言となった童話のラストには「命は巡る」と書き綴ってあった。その言葉の通り遺志は一粒種の娘へと巡り生き続けている。
岡力(おか りき)
コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「球友再会」(月刊神戸っ子)