4月号
元町映画館 vol.4|金継ぎに込めた、 過去を乗り越える想い
金の糸
“OKROS DZAPI”
今年1月、東京の岩波ホール7月閉館のニュースが流れたとき、映画ファンはもちろん、元町映画館をはじめとする各映画館も大きな衝撃を受けた。「いい映画ばかり上映してきた映画館がなぜ?」と。“いい映画”には、今回ご紹介するようなジョージア映画も含まれる。現在93歳のラナ・ゴゴベリゼ監督が首都トビリシを舞台に描いた『金の糸』は、重い過去を背負いながらも、軽やかで、人生への愛情に満ちている。
79歳の誕生日を迎えた作家、エレネは、長年連絡が途絶えていた元恋人アルチルからの電話に心を踊らせる。一方、ソ連時代は高官として活躍したミランダとの再会に胸騒ぎを覚えるのだった。3人の複雑な過去を辿るだけでなく、監督の母ヌツァが辿った粛清と流刑の過去を物語に取り入れ、エレネがひ孫とアートや詩に触れながら、それらを共有していく。そこで登場するのが日本の伝統的な修復技法「金継ぎ」だ。その精神に、過去の心の傷をどう昇華させ、継承していくかという命題を重ねた。足は動かなくても、想像の翼を広げ、自由な今を噛みしめるエレネ。そのしなやかな生き方は、人生100年時代の道標になることだろう。(江口由美)
金の糸”OKROS DZAPI” (2019年 ジョージア・フランス 91分)
監督・脚本:ラナ・ゴゴベリゼ
出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ、ダト・クヴィルツハリア
配給:ムヴィオラ
元町映画館にて4月2日(土)より2週間上映
〈その他の注目作〉
4月23日から1週間連日開催する楽士、鳥飼りょうさんによる恒例の「SILENT FILM LIVE」。今回は2月にご紹介したカール・テオドア・ドライヤーの女性映画もラインナップ。生演奏によるサイレント映画上映をぜひお楽しみください!
元町映画館
神戸市中央区元町通4-1-12
66席+1(車椅子)
TEL.078-366-2636
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Ⓒ 3003 film production, 2019