2021年
10月号
10月号
映画をかんがえる | vol.07 | 井筒 和幸
1970年代に公開されたアメリカ映画を今、暇さえあれば見直している。どれもこれも、当たり前のことだが愉しい。俳優もくせ者揃いだし、アクションで売る映画でさえ、場面、場面には詩情があった。ワンカットが散文詩の一行のようなのが改めてわかる。昨今のハリウッドの娯楽作は1カットが劇画の1コマだから、風情なんて求めようがない。この画面は西部の閉塞感(解放感でもいいけれど)が出てるなぁなんて感じる間もなくカットが短か過ぎて、下手をすれば、どこの国の話かも分からない。ストーリーを追うだけの動画が多い。何千万ドルも制作費をかけて勿体ないなと思う。まあ、どこの何町でもいいミステリーやゾンビドラマは街の風情などに拘っている場合じゃないのだろうが。
PROFILE
井筒 和幸
1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』全国順次拡大公開中!