2021年
10月号
10月号
神戸で始まって 神戸で終る ⑳
横尾忠則現代美術館がオープンすると同時に、何となく気ぜわしい気分になってきた。僕が特別何かやるわけでもないのに、神戸の方からザワザワしている波動が東京にまで伝わってくる。こうした心的状況は今も同じで、アトリエにいながらもうひとつの分離した意識は神戸にいるというバイロケーション(一箇所にいながら別の場所にも存在する)感覚を常に味わっている。美術館の建物の隅々まで、透視しているようにはっきりと見える。勿論、学芸課長の山本淳夫さん、学芸員の平林恵さん、林優さんも、今どこで何をしているのかが手に取るように、まるで映像で見ているように見える。
現在はコロナ禍のために、現地に行くことは控えているが、僕の透視能力(?)によって、見ていない展覧会まで見えるような気がする。開館オープン時には年4回の展覧会が予定されていたが、現実的にこの頻度で展覧会を続行するのは作品点数の制限と、学芸員の人数などを考えると、多忙を極めるために、年4回の展覧会を3回に減らすことになった。それでも、オープン時は全員が張り切っていたので、このオーバーワークも物ともしないで、どんどんこなしていた。
美術家 横尾 忠則
1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。横尾忠則現代美術館にて「横尾忠則の恐怖の館」展を開催中。
http://www.tadanoriyokoo.com