2021年
8月号
8月号
映画をかんがえる|vol.05|井筒 和幸
今でもそうだが、ほとんど毎日、日課のように「映画」を見る。でも、その大方は過去に銀幕で体験した作品なので、まあ「観る」というより、小さなテレビ画面で「眺める」という感じだが。例えば、『イージー・ライダー』(70年)の冒頭で、長髪に無精ヒゲの人相の良くない30歳過ぎのヒッピー二人がバイク旅の途中に寄ったアリゾナ州の夜のモーテルのネオンサインも、彼らの風貌の所為で急に「空室なし」の文字に変えられてしまうのだが、それは読みにくいし、色もよく分からない。その時代の空気感がぐぐっと迫ってきてくれないのは歯がゆくてならない。やはり、「映画」は映画館でしか見られないものだとつくづく思う。ネット配信で眺める「映画」は明らかに原版と別の物だし、ボクにはストーリーと台詞を追うのが関の山だ。
PROFILE
井筒 和幸
1952年奈良県生まれ。奈良県奈良高等学校在学中から映画製作を開始。8mm映画『オレたちに明日はない』、卒業後に16mm『戦争を知らんガキ』を製作。1981年『ガキ帝国』で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。以降、『みゆき』『二代目はクリスチャン』『犬死にせしもの』『宇宙の法則』『突然炎のごとく』『岸和田少年愚連隊』『のど自慢』『ゲロッパ!』『パッチギ!』など、様々な社会派エンターテイメント作品を作り続けている。映画『無頼』全国順次拡大公開中!