8月号
変わっていく働き方 ~ カルチャーを通して、街をデザインする ~
Culture × Town development
クロシェホールディングス沼部美由紀さんを進行役に、街をデザインシリーズの2回目をお届けします。
ワークスタイルの変化が取り沙汰される今日。
「ワーケーション」ってトレンドだけど、実際のところどうなの?
コロナ禍で変化をよぎなくされた働き方について、3人の経営者たちが肌で感じてきた、
ありのままを語ってくれました。
ワーケーションって何?
沼部 ワーケーションとか働き方がテーマなので、どういう服を着て来ようかと悩んだの。トレーニングウェアでもありかと思ったり。早速だけど、ワーケーションって何?
横山・西山 え〜〜!!
沼部 もちろんわかっているつもりよ。ワーキングしながらバケーションでしょ。
横山 確かにちょっと違和感があるよね。でも、ここKissFMの本社のように神戸港に突き出たロケーションだと、気分が全然違う。効率はあがるね。
沼部 わかる!
西山 景色がご馳走ですよね。私、ホテルに住んでいます。住みながら働くというか、働きながら住むというか。
沼部 家は?
西山 あります。あんまり帰っていないけれど。いまANAクラウンプラザホテル神戸の4階ホテルロビー階でコワーキングオフィスを運営しているので、ホテルの客室が社長部屋。14階を、会員向けのオフィス機能付きセカンドハウスに。共用スペースにランドリーとキッチンがあって、ご飯を作りながらみんなと交流したり。ホテルにはプールやジムもある。ホテルとコミュニティーとワークの掛け合わせですね。
沼部 めっちゃいい。シェアハウスでありシェアオフィス的な感じ。地方でシェアオフィスを借りても、どうせホテルを借りないとダメでしょ。それが全部そろっているのね。
西山 コロナで自宅待機になって40%相当の人がテレワークを経験していて、その中でワーケーションで仕事をしたという人が6%くらいいるそうです。
沼部 ワーケーションだから、沖縄とか温泉地で?
西山 それが、7割がビジネスホテルらしいんです。
横山 それをワーケーションって言っているわけ?
西山 そう。理由はいくつかあるんだけど、大きな理由はネット環境。つながらない、速度が遅い、大勢が使うと安定しないとか、まだ環境が整っているとはいえないようで。ZOOMで会議していても画面がカクカクしたり音声が途切れたり。その点、ビジネスホテルは比較的安定しているので選ばれているんじゃないかな。
横山 すぐに解決しそうな問題だよね。
西山 でも、他にも支障が。雇用側が管理面で嫌がっている。特に大企業。ホテルだと仕事せずに、寝ているんじゃないか、遊んでいるんじゃないかって。私のところでも、コワーキングスペースで仕事しているか、個室に誰と来たのか、確認して欲しいって要望も。
沼部 正直、管理するのって絶対無理よね。ワーケーションって、仕事の進捗に問題なければ、どこで何をやってもいいはずなんだけど、既存の就業規則の枠内では無理だから困るのよ。
横山 管理しなければできないビジネスのレベルなら、ワーケーションなんて絶対できない。自らセルフマネジメントができる人しか無理だよ。
求められるワークスタイル
横山 ワーケーションでできる仕事って一部だけで、コロナ禍で頑張ってくれているエッセンシャルワーカーやUberEatsなどのギグワーカーはできないし、そうでなくても現場の1人が出来る仕事量って限られているから、どうしても生産性が低くなり結果的に給料も低くなる。ワーケーションだとか言っている人は、生産性が高く報酬も高い仕事の人が多いから、どうしても格差が生まれる。自由に職業を選べない状況の人もいるから、2極化の流れはますます広がっていくだろうね。
沼部 ワーケーションができる環境にいないと「何がワーケーションだ!」って言いたくなるのは、イメージが先行しすぎているのかも。帰省と合わせたワーケーションもあると思うし。クリエイティブな職種の人には、役に立っていると思うの。
西山 私、8年前に「新しいワークスタイルで未来を拓く」という思いで事業を始めました。管理されて働くのではなく、やりたいことを懸命にやって仕事を楽しむという働き方。「ビジネスを遊びに」みたいな形にしたいなぁと思っていて。
横山 理想はそうですよ。
沼部 そうよね。でも「ビジネスは遊びじゃない」って怒る人もおられるし。
横山 その仕事で一生懸命にやっている状態、ゾーンに入っているとかフロー状態という言葉を使うんだけど、その状態だと管理されなくても仕事ができるんだよ。でも、結局はホワイトカラーの話。それでいいのかも知れないけど。
沼部 仕事って役割で違うから、同じ会社内でも販売員とIT系の人は全然違うし、同じに考えるなんてことはできない。私のところでは、ライブ配信でのオンライン接客に置き換えてきたから、販売員もワーケーションができる環境にあるけど、考え方よね。特にファッションの世界は、クリエイティブ性がないといけないから、仕事に縛られずにいろんなことを学んでいく気持ちが大切。今の状況を生かして欲しいの。
横山 コロナ禍だからということもあるけど、デザイナーやエンジニアの採用を在宅勤務ベースにした。遠い福井県の実家で介護中だけど、仕事がしたいとかね。会社に来たければ来てもいいからって。
西山 学生の就職先選択基準も「働く場所を自由にしてくれる会社」が多くなっているそうです。特に女性。ライフステージが変わると働き方も変わるからで、恋愛や結婚、晩婚化で親の介護と子育てが重なるダブルケアの問題もあって、働く場所を自由に決めたいという希望がすごく多いそうです。
沼部 それをすると、出会いの場が無くなりそう。社内恋愛とかできないだろうし。
横山 今までは、働くところとコミュニケーションをつくるところが一緒になっていたのがわかれるだけで、それでいいんじゃないかな。
沼部 職場恋愛反対なの?
横山 違うよ。そういう時代じゃ無くなってきたのかなと。今は、連絡を取り合える手段はいくらでもあるし。
沼部 「働いている姿がステキ」とかあるのにねぇ。
西山 普段自分に格好つけている姿よりも、仕事に懸命に取り組んでいる姿って、ギャップがあってかっこいいのに。
これからのコミュニケーション
沼部 営業で「これをいつまでに仕上げる」として、20代の子たちはオンラインで盛り上がって進めていく。私たち慣れていない世代は、会社での雑談から良いアイデアが出たりする。
西山 無駄の効用って大事だと思うのです。
横山 大学の講義をネット上でやると、雑談は逆にしやすい。講義が始まる15分前から入れるようにしておけば、雑談したい人は入って来る。授業が終わっても、雑談したい人は残っている。
西山 同じ画面上ですもんね。リアルだと先生と話しをしたいと競争になるし、わざわざ会いに行かないとだめ。今は、会いに行く理由がなくなってきている。
横山 ほんと無いよな。会議もオンラインで出張の必要がない。月に1回、全国から東京に集まっていた会合がZOOMになって、不便に感じることなんて1つもない。
沼部 便利しかないよね。出席しているみんなの顔も見えるし。ただZOOMでの登壇だと緊張感が薄れるのが問題だけど。
横山 大学で講師をしていると慣れたよ。2年近くやっているところで、先日はじめてハイブリッドだけどリアルでやった。もうオンラインが普通。
論文を仕上げるのにもオンライン上で手伝ってもらった。コメントを入れてくれて、同時に修正していくわけ。これって、会わないとできなかったのが、テクノロジーのおかげで効率的に修正ができて、それに対する答えもすぐにあって。リアルよりも親密に会話している気がした。リモートで人間関係がさらに近くなったかも。
西山 クラウドとリアルの融合が行われたら、1番強いツール。
横山 営業職なんか、顔をつきあわせて一緒にやっている感でモチベーションの向上につながっていた。オンラインだとそれができずに効率が下がると懸念をしていたけど、うまく活用できれば、人間関係をより高めていける可能性もあると、今は感じているよ。
株式会社クロシェホールディングス
代表取締役社長 沼部 美由紀 氏
阪神・淡路大震災の翌年に、美術品、食器のバイヤーから独立。「ここち良さを、あたらしい視点から」をポリシーとして事業を展開し、自社ファッションブランドを立ち上げる。現在、クロシェのサステナ宣言「Redraw the Circle(循環を描きなおそう)プロジェクト」を発表し、無駄なものはつくらない「受注生産」への転換を試みている。
SRCグループ CEO
Kiss FM KOBE(兵庫エフエム放送株式会社)
代表取締役社長 横山 剛 氏
大学在学中に起業し、以来リクルート広告事業などを手掛け、平成22年に兵庫エフエム放送株式会社(Kiss FM KOBE)を地元優良企業らと設立。現在、神戸のまちづくりにも関わりつつ、立命館大学・近畿大学・神戸芸術工科大学・神戸学院大学などでの講師や公演活動のかたわら、自身も神戸大学大学院 経営学研究科 博士課程後期(栗木契研究室)に在学中。
株式会社078
代表取締役社長 西山 志保里 氏
10年間のフリーランス経験を生かし、創業支援をコンセプトとしたシェアオフィス&コワーキング事業「plug078」を運営。起業家のスタートアップ支援のほか、定期的に交流会などを開催しビジネスの輪を広げる機会と場所を提供している。2019年には、保育園&託児機能併設のコワーキングスペース「078保育園」を開園するなど、新たな働き方を提案し続けている。