3月号
harmony(はーもにぃ) Vol.37 あいまいな喪失
この3月11日で東日本大震災から10年になります。
1万5899の人たちが亡くなり、2527人の人が現在も行方不明となっています。震災で家族を失った父親が、小学生で行方不明になっている我が娘を今もずっと探し続けている姿がテレビの番組で放映されていました。遺体が発見されていないので、父親は娘の遺体の一部でも見つからない限り、娘の死を納得して受け入れられないのです。津波にのまれて行方がわからない人たちがまだ大勢います。漁師の夫を津波で亡くした妻は遺族の慰霊祭や慰霊塔に夫の名前を入れてもらうべきかどうか悩んでいます。夫のことを「あの日からまだ帰ってこない人」と呼び、死を受け入れるべきかどうか迷っています。
このように、家族や身近な人の生存が確認できないのは災害だけでなく、遭難、失踪、戦争や戦闘、テロや事故、事件に巻き込まれて行方不明になったままの人の家族は「あいまいな喪失」を抱えて納得のいかない不確実な死に苦しんでいるのです。龍谷大学短期大学部の黒川雅代子教授は「あいまいな喪失と分かることで、当事者が感じている罪悪感を軽減する。周囲の人も無理に解決をつけたり、過ぎ去ったことにせず、あいまいさを持ちながら不完全でもいいから、長い歩みの中でどういい人生にしていくかを尊重することが必要と思う」と話しています。
アメリカのミネソタ大学名誉教授で社会心理学者のポーリン・ボス氏はベトナム戦争の行方不明者やテロ被害者、認知症患者らの家族支援に長い間関わり、「喪失した確証のない不確実な状態で、心理的に存在しているが、身体的に存在しない」ことを「あいまいな喪失」と考え、理論づけています。彼女は2012年に来日し、東日本大震災の被災者ケアに関わる専門家を対象に講演会などを開いています。
あいまいな喪失は「さよならのない別れ」と言われます。新型コロナウイルスの感染者は危篤の状態になっても病院での身内の面会は許されず、「さよならのない別れ」を強いられます。ポーリン博士の「あいまいな喪失」理論はコロナ禍のなかでも参考になりそうです。
愛の手運動は
親に育てられない子どもたちに、
里親・養親を求める運動です。
募金箱の設置にご協力いただける方は
協会にご連絡ください。
公益社団法人 家庭養護促進協会 神戸事務所
神戸市中央区橘通3-4-1
神戸市総合福祉センター2F
TEL.078-341-5046
https://ainote-kobe.org
E-MAIL:ainote@kjd.biglobe.ne.jp