3月号
仲間とともに、という甲南での学びが心にあった
天理大学ラグビー部 主将 松岡大和さん
今年1月、大学ラグビー日本一を決める第57回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝が行われ、天理大学が早稲田大学を破って初優勝を果たした。天理大は2連覇を狙う早稲田大を55-28で下して悲願の初優勝。関西勢の優勝は、故平尾誠二さんらが活躍した同志社大の3連覇以来、実に36年ぶりだった。長い間、関西勢は勝てないと言われ、とりわけ本年度は新型コロナの部内でのクラスターなど、数々の苦難を乗り越えて栄冠を掴んだ天理大ラグビー部。主将・松岡大和選手は神戸市出身、甲南高校ラグビー部の出身ということで、今回インタビューにお答えいただいた。
―甲南学園の創設者・平生釟三郎は、「世界に通用する紳士たれ」という教えのもと、ラグビーに力を入れたことでも知られていますが、甲南学園時代に特に心に残っていることはありますか。
甲南は男子校ということもあってか、練習のときも私生活においても、先輩・後輩関係なく過ごせたと思います。体育会系の部活というと、上下関係が厳しかったり、先輩がとても怖いというところが多いようですが、甲南はそういうのがなくて、みんな家族みたいに仲よく過ごしていたこと、それはとても良かったですね。先輩も後輩に気軽に話しかけてくれましたし、後輩ももちろん礼儀はありましたけど、気軽にいろいろ教えてもらったりということがありました。
兄が中学からずっとラグビーをやっていたので、僕も中学から始めました。僕が入部したのは兄が卒業した後だったのですが、兄の後輩たちが僕のことを知っていて、「おい、ジュニア!」と言って無理やり部室に連れていかれたんです(笑)。あんな身体の大きな先輩たちに、反抗なんかでけへんかったですし…でも、ボールさわってみ、と言われてやってみたらけっこうおもしろくて、それからです。甲南は中学からラグビー部があって、中学・高校と一緒に練習をしてきているので、高校生が中学生を教えたり、中学生は高校生の姿を見て学んでいましたね。
―甲南ラグビー部の教えはどうでしたか。
スポットコーチの樫塚安武さんについて学べたことが、やはり大きかったです。樫塚コーチはニュージーランドのラグビーチーム「クルセイダーズ」で通訳も務められていて、ラグビーのおもしろさというものを本当に教えていただきました。僕が中3の終わりにニュージーランドへ留学したのも、樫塚コーチが日本に帰国してきた際に甲南の練習を見て声をかけてくださったことがきっかけでした。ニュージーランドに行って、日本とはまったくちがう練習に参加し、日本人と海外の選手はプレースタイルもまったくちがいますし、そういう中で、日本では教えてもらえないことを現地で教えてもらいました。こんなラグビーもあるんや、と。基本的なパスのスキルであるとか、普段の行動といったことなど、細かく学べたおかけで、よりラグビーがおもしろくなりました。
樫塚コーチが天理大出身で、「天理はええぞ」とよく言っていたので、天理に進んだのはコーチの影響もありました。僕はもともと関東の大学に憧れがあったんですけれども、そんなふうに考えていた矢先に天理大から声をかけてくださったんです。なかなかこういう弱小校の選手に声をかけてくださることは、少ないことなので、このチャンスは逃したらあかんぞと思って、決意しました。天理はラグビーに打ち込むにはすばらしい環境でした。神戸みたいに高層ビルもないですし、遊ぶところも…(笑)。ラグビーに没頭できるということ、そういう点ではニュージーランドに似ている感じもします。
―天理大のラグビー部では主将としてチームをまとめたわけですが、甲南ラグビー部で培われたことが、生きたなと思われたことは。
甲南でもキャプテンをさせていただきましたが、当時、自分は「花園に行くぞ!」という思いが強すぎて、なかなか周りが見られない時期がありました。そのおかげでみんなに迷惑をかけたんですけれど、そういうときに、仲間が助けてくれて、そのおかげでやってこれたんです。そのときに、周りを、仲間を頼るということは、とても大事なことなんだなということに気がつきました。そんな高3のときの経験が、大学でキャプテンをやっているときにも役に立ったと思います。天理の部員は160人ぐらいいて、それを一人でまとめるというのは難しいので、それこそ周りの仲間を頼りながらやってきました。
―2024年に創設100周年を迎える甲南ラグビー部の後輩たちにエールを。
今は、コロナの影響で大変な日々を過ごしていると思います。そういう中で、今、何ができるかということを自分でしっかりと考えて、まずはラグビーを楽しんでやっていってほしい、という思いを伝えたいです。
僕は2月6日に卒業試合があって、2月1日から社会人チームの練習参加がスタートします。早くラグビーがしたい、という思いが強いです。早く練習に参加したいですね。