2月号
縁の下の力持ち 第24回 神戸大学医学部附属病院 睡眠呼吸管理センター
ぜひ知ってほしい!「睡眠時無呼吸症候群」のこと
「睡眠時無呼吸症候群」の検査と治療を担う「睡眠呼吸管理センター」。この症状に起因する昼間の眠気が引き起こす事故が他の人を巻き込んでしまうかもしれない。一人でも多くの人に知ってもらい、治療を始めてほしいと地道な努力を続けています。
―睡眠呼吸管理センターとは。
呼吸器科外来で週1回開設されている睡眠時無呼吸症候群専門外来を受診し、診断を受けた患者さんの検査と治療を目的に2011年、医療機器メーカーからの寄付を受け、共同研究部門として開設されました。ですから「センター」といっても専用の部屋や建物があるというわけではないです。
―睡眠時無呼吸症候群とは。患者さんはどんな自覚症状があって来院するのですか。
寝ている間に何度も呼吸が止まる症状が睡眠時無呼吸症候群です。大きないびきをかいたり、寝ていても脳が休まらず昼間急に眠気におそわれたりします。本人は気付きにくく、多くの場合、同じ部屋で寝ているパートナーが気付き来院されます。
―検査はどういうものですか。
簡易検査機を貸し出します。ご自宅で夜寝る前に付けていただき、鼻での息の流れ、呼吸の音、酸素飽和度などを計測し、そのデータを解析します。「1時間に10秒間呼吸が止まることが5回以上ある」を基準に診断します。上回っている場合は入院していただき、脳波や呼吸の動きを測定しながら、確実に睡眠している間に呼吸が止まっているのかを確認するなど、さらに精密な検査を続けます。
―何が原因で寝ている間に呼吸が止まるのでしょうか。
口に中で、舌が奥に落ち込み空気の通り道がふさがれる「閉塞性無呼吸症候群」とよばれるものがほとんどです。生活習慣病などによる肥満に伴って起きるケースが最も多く、肥満でさらに血圧が高い方はリスクが高いですね。また女性の場合は閉経後、ホルモンバランスの変化に伴って増加する傾向にあります。若い人でも顎の骨格が小さくて気道が狭く、無呼吸を起こすこともあります。
―治療方法は。
夜寝るときにCPAP(シーパップ)と呼ばれる専用の装置を付けます。空気を口の中に送り込み圧力をかけ、舌を少し持ち上げて気道を確保する治療法です。軽症であれば、マウスピースで下顎を少し前に押し出す方法や、横向き寝をすることでも改善できます。
―息が止まってそのまま死に至ったり、酸素が足りなくて脳の働きに悪影響が出たりすることもあるのですか。
無呼吸の症状があると、突然死のリスクが幾分高いといわれますがそれほど心配する必要はありませんし、酸素不足が直ちに脳の働きに悪影響を与えるようなことはありません。
―体にどんな悪影響があるのですか。
動脈硬化が進む傾向にあり、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引きおこすリスクが高まります。「疲れるなあ」と思いながら本人は無呼吸だとは気付かず日々過ごしていた人が治療をすると画期的に改善し、生活の質が一変するケースもあります。
―気付いたら、何科を受診すればいいのでしょうか。
生活習慣病の治療も併せて必要になることも多く、症状に気付いたらまずはかかりつけ医に相談しましょう。簡易検査が可能な病院、耳鼻科や呼吸器科クリニックもありますので確認して受診されるのもいいと思います。無呼吸の疑いがあれば、かかりつけ医からの紹介で神大病院呼吸器内科を受診し、当センターで検査・治療をしていただくことも可能です。
―年を取ったから、太ってきたから「しょうがない」と我慢してしまいがちですね。
本人がつらいのはもちろんですが、最も怖いのは、昼間の運転中や作業中に眠気におそわれて起こす事故です。交通事故が報じられると注目されるのですが、すぐに忘れられてしまいます。無呼吸症候群が他の人を巻き込み不幸にするかもしれないということを、私たち専門医は折にふれ発信しています。早期に発見して対処することがご自身のためにも、周りの人たちに対しても大切なことです。