2021年
1月号
1月号
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東京・六本木にナショナル宣伝研究所から移る。右から2人目が筆者
Tadanori Yokoo|神戸で始まって 神戸で終る ⑫
どさくさまぎれの状態で神戸を去ることになった。青谷の高台にある一間のアパートが新婚住まいだったが、窓からは遠く、神戸港が眺められた。夕方になると風に乗ってドボルザークの『新世界より』の「家路」がスピーカーから流れてきた。こんなのどかな止まったような時間こそ、お金はなかった(本当になかった)けれど絵に描いたような幸せな空気が漂っていた。六畳一間で、廊下に面した木戸を開けると、そこは半畳の板間の台所だった。トイレは共同便所で風呂はなかった。
西脇の田舎から出てきた僕は、新婚生活というには、やっと21才になったばかりで、その精神は子供の域を出ていなかったので、新婚生活はママゴトに毛が生えた程度の実にプロトタイプなものであった。
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左から2人目が横溝敬三郎さん、その隣が筆者(ナショナル宣伝研究所で)
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寺井昭子さん(神戸労音)《左から2人目》、永井一正さん《左から3人目》、筆者《右端》(田中一光さんの家で)
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東京・六本木にナショナル宣伝研究所から移る。右から2人目が筆者
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田中一光さん(東京の自宅で)
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撮影 三部正博
美術家 横尾 忠則
プロフィール
よこおただのり 美術家。 1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、小説「ぶるうらんど」で泉鏡花文学賞、「言葉を離れる」で講談社エッセイ賞受賞。愛知県美術館にて「GENKYO 横尾忠則」展を開催。(1月15日〜4月11日まで)
http://www.tadanoriyokoo.com