5月号
音楽のあるまち♬24 神戸モーツァルトクラブ
神戸モーツァルトクラブ
ピアニスト 高橋 真由 さん
モーツァルトを愛する仲間が集まり、音楽を通して楽しい時間を共有している「神戸モーツァルトクラブ」。会員の高橋真由さんに、クラブのこと、音楽や楽器のことなどお聞きしました。
―神戸モーツァルトクラブとは。
38年前、モーツァルト愛好家たちが集まったのが始まりと聞いています。豊かな時代だったのでしょうね、モーツァルトに限らずクラシック音楽を愛する人が集い、演奏を聴き語り合ってきました。今年は、子どもたちが音楽評論家の公開レッスンを受ける例会なども予定しています。
―音楽のプロが集まっているのですか。
あくまでもヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの音楽を愛する人たちの集まりです。今はそこまで厳しくはないのですが、発足当時、プロの演奏家は入会できなかったそうです。
―主な活動は。
年に10回程度開催している例会は、演奏後には経済学者で音楽評論家でもある元会長の井上和雄先生のレクチャーがあったり、みんなで集う気軽な演奏会です。新年と夏の懇親会、ランチコンサート、クリスマスコンサートなどでは演奏家を囲んで語り合う時間を設けています。音楽の話だけでなく、食事やお茶、時にはワインなど飲みながら、いろいろな楽しい話で盛り上がっています。
―モーツァルトとの出会いは。
オーストリアの大学へ留学し、チェンバロを勉強していたこともあり、ピアノの古楽器であるフォルテピアノにも興味がありました。モーツァルトは上品で優雅なイメージでしたが、大学近くのピアノ博物館でフォルテピアノで演奏してみると、曲がとても生き生きとよみがえって聞こえたことを今でも鮮明に覚えています。それまでは、現代ピアノを専攻していたのですが、最初のレッスンがあった直後に先生に「フォルテピアノに転向します」と言ってしまいました。アンティーク好きだからかもしれません(笑)。フォルテピアニストにとってモーツァルトを弾くことは必要不可欠なことです。私は、モーツァルト時代のピアノにたくさん触れる機会に恵まれ、彼の音楽に自然に心惹かれるようになりました。私はモーツァルトの魅力を楽器から教えられたと思っています。
―フォルテピアノとはどんな楽器ですか。
イタリア語でフォルテは「強く」、ピアノは「弱く」。それまでのオルガンやチェンバロと違い、「強弱」が付けられるようになったのが特徴です。ピアノという楽器ができて間もない頃の形はチェンバロによく似ていて、とても華奢で細長く5オクターブしかありません。モーツァルトの時代に演奏していたのはこのピアノです。その後、改良を重ね、略して「ピアノ」と呼ばれるようになり、現在の「グランドピアノ」という完成形が出来上がりました。フォルテピアノはチェンバロと同じくすぐに調律を必要としますので、奏者自身が演奏前に調律をすることが当たり前の楽器です。私は「どの時代のピアノともその楽器の長所、短所を理解し親しくなりたい」と思っていますし、曲ができた時代に合った楽器で演奏すると作曲家の気持ちがよく分かります。フォルテピアノで演奏することはピアニストにとって弾くだけで音楽が感覚で分かってしまうような経験となると思います。
―そこで、古楽器で演奏するコンサートを企画されたのですね。
ピアニストでモーツァルト研究家、フォルテピアノも演奏される久元祐子先生をお招きします。オーストリアにいたころ、コンサートのためにイタリアへ来られると知り、訪ねて行き、神戸に帰って来てからも何度も演奏会に行かせていただいております。先生は東京に楽器のコレクションをお持ちですが、フォルテピアノでの演奏会は神戸では初めてと聞いております。出演をお願いしたところ快諾いただき、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの古楽器奏者第一人者との共演が実現します。
―モーツァルトの魅力を伝えられるといいですね。
栄光教会の素晴らしい音響とともに、昔のウィーンにタイムスリップしたような演奏会を皆様に味わっていただけましたらと思っています。「古楽器でモーツァルトを聴く」は来年3月6日㈯(コロナウィルス感染拡大防止のため延期)、神戸栄光教会で開催予定です。詳細が決まり次第ホームページでお知らせいたしますので、ぜひ気軽に聴きに来てください。