2020年
5月号
5月号
神戸のカクシボタン 第七十七回 劇場で才能を育み地域に貢献
写真/文 岡 力
劇場で才能を育み地域に貢献
「心を育て地域に寄り添いたい」そう語るのは、女優であり劇場支配人の大志田詢子さん。9歳からバレエを始め大阪芸術大学舞踊コースに進学。付帯設備のプレハブ小屋でレッスン漬けの毎日を過ごした。卒業後も同校で講師として後進の育成に励んでいたが結婚を機に神戸へ移住。間もなく産休し主婦として育児に追われた。
転機となったのは、余命わずかだった友人からの言葉。「やり残したことないの?自分には時間がないから…」と言われ再び表舞台を目指す事にした。以前から興味のあった「ジークンドー」を習い名門「新生JAC」のメンバーとして活躍。活動を介して役者が職業として生活していける場所を創りたいと思うようになる。
合言葉「やってみます」を胸に自身で劇場建設を着手。今から4年前、JR三宮駅すぐの駐車場スペースだった場所に「神戸三宮シアター・エートー」を開業した。名称は、かつて仲間と夢を語り合った大学のプレハブ小屋「A棟」(エートー)に由来している。
できる限りの夢を込めたというキャパ100の場内。客席を桟敷にする事も可能で演劇、寄席、映画とあらゆる演目に対応している。スタッフの大半が役者と兼務しておりコンセプトに掲げた二足のわらじを実現。また震災の経験から一時帰宅困難者には宿泊施設として場所を開放している。かつて大志田さんが青春時代を捧げた「A棟」は既に取り壊された。だが系譜を継ぐ「新生エートー」は今も変わらず人々に夢と希望を与えている。
■神戸三宮シアター・エートー
神戸市中央区琴ノ緒町5-6-9 【電】078-231-0011
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載・レギュラー「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)