3月号
神戸のカクシボタン 第七十五回 「和しょくや 佳肴」
写真/文 岡 力
うまい肴と酒を身近に感じて欲しい 「和しょくや 佳肴」
JR甲子園口駅前に、いにしえの風情漂う迷路のような雑居ビル「ヌーベル甲子園口」がある。デザインを手掛けたのは、あの安藤忠雄氏だ。歴史的建築物だが敷居は低く散歩のついでにふらり散策するだけでも値打ちがある。様々な個性的店舗が軒を連ねる一角に創業4年「和しょくや 佳肴」はある。
店名は、「うまい酒のさかな」を意味する。枯山水をイメージしたカウンター越しに調理をするのが店主の足立篤嗣さんだ。18歳で料理の道を志し割烹料理店で20年に渡り修業を積んだ。これまで向き合ってきた「和食」は、高級なイメージが定着し日本人から離れた存在になっていた。そこで若い世代に対し安価で提供したいという想いから築いた夢の城。その言葉通りメニュー表には驚きの品々が並ぶ。毎朝、福島の市場で仕入れた旬の食材で作る「おまかせ料理」は、付き出しに4品が付いて2000円ポッキリ。時期によってメニューが変わり四季折々の味が堪能できる。料理がテーブルに配膳されるとスタッフの瀧上陽二郎さんより「好きなお酒のタイプは?」と聞かれ厳選された地酒がグラスに注がれる。
「本物」の肴をつつきながら日本酒を呑む…趣のある店内で自分だけの心地の良い時間が流れる。「正直、高級食材は使えません。誰でも手に入る物で工夫して調理をしています。この場所で長く続け新しい和食の形を作っていきたいです」鯛茶漬けやオリーブを練り込んだ素麺といったシメに最適な料理も充実している。様々なシーンで気軽に活用できる嬉しいお店である。
■和しょくや 佳肴(かこう)
西宮市甲子園口3-4-20
ヌーベル甲子園口2F
【電】0798-67-7868
https://aaadachi08.wixsite.com/kakou
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載・レギュラー「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)