1月号
WHAT IS IT? Vol.6 (最終回)「歴史の中のコンピューター」
文/永吉一郎
第二次世界大戦が終結した翌年1946年にアメリカ政府は戦時下で機密となっていた様々な技術を機密解除しました。その中の一つがENIAC。世界で最初のプログラム可能な自動電子計算機と言われている物です。用途は陸軍の弾道計算。当時弾道計算には数百人もの人間が一斉に取り掛かる必要があり、人間コンピューターと呼ばれていました。ちなみにENIACのサイズは重量27t、長さ26mと言う巨大なものでした。ENIACは戦後も軍事面で利用され水爆の設計などにも利用されていましたが、ハンガリー出身の天才科学者フォン・ノイマンが戦時中からENIACの改良に着手、戦後にEDVACと命名された現代のコンピューターの原型であるノイマン型と呼ばれるアーキテクチャーを完成させます。
時は流れて1951年、世界初の商用コンピューターであるUNIVAC1が発売されます。そしてこれがメインフレーム時代の幕開けでした。1964年IBMのSystem/360が世界的に大ヒット、日本では通産省がコンピュータ国産化を推進、富士通、日本電気など各社が独自のメインフレームを販売していました。そして1981年、メインフレームでも成功していたIBMが小型で安価なPCの分野にも進出すべく16ビットのIBM PCを発表、世界的なベストセラーとなり、企業や家庭にコンピューターが普及する原動力となりました。同時にIBMがこのとき取った開発手法、CPUはインテル、OSはマイクロソフトというベンチャー企業にアウトソーシングしたことが後年両社が世界的大企業になったきっかけです。
そして1980年代はPCがものすごいスピードで普及し、量産効果で価格もどんどん低価格になりますます普及して行きます。
この時期に登場したのが前回スティーブ・ジョブズの事について書いたときにも取り上げたAppleのPC、Macintosh。ユーザーインターフェイス(いわゆる操作画面)を画期的なまでにグラフィック化、以後のコンピューターに絶大な影響を与えます。
そして1990年代になってますますダウンサイジングと低価格は進み、90年代中頃になっていよいよインターネットが登場、コンピューターのインターネット端末化が進んで行きました。
そして1999年、ITの世界では数少ない日本が先行したインターネットサービス、iモードサービスが開始されます。これは、携帯電話がインターネット端末に向いていることを証明しました。iモードは大ヒットし、国内のみならず海外でも同様なサービスが次々と始まりました。
2000年になると携帯電話は独自の進化を続けます。高機能なCPUを搭載してカメラやGPS、TV視聴機能などをコントロール、非常にコンパクトかつ高機能になって行きました。もうこれであとは小型化と高機能化の競争になると思われた頃。
2007年初頭に発売されたAppleのiPhoneがまだまだITは進化し、ユーザーは便利になるということを証明しました。ネット接続、通話、音楽プレーヤーをベースにソフトをダウンロードする事でユーザーの思うがままにカスタマイズできるこの画期的な新製品は瞬く間に世界を席巻し、長らく新しいコンセプトの生まれなかった携帯電話業界にスマートフォンという分野を生む事になりました。同時にiPadで実現したタブレットPCという市場をも開拓するに至ったのです。
現在はインターネットは更に強化を重ね、クラウドというネットの向こうにソフトやコンテンツの全てが存在すると言うシステム概念が普及しつつあります。と同時にネットを利用した犯罪も増加する一方です。ITはこれからどこへ行くのか。いずれにしろ人間の幸福のために存在すべき道具である事は間違いありません。
株式会社神戸デジタル・ラボ(KDL)
代表取締役社長
永吉 一郎
1962年神戸生。広島大学卒業後京セラに入社、光学機器の開発に従事。国内外工場の量産立上げを経験。1991年父親の病死に伴い神戸に戻り日宣通の社長に就任。1995年阪神淡路大震災の経験を元にWEBシステム開発の神戸デジタル・ラボを設立、現在に至る。ICT推進協議会副会長、神戸市政策提言委員など歴任。