11月号
いい夫婦の日|お互いに気を使うことなく、 飾らない自分でいられる
出会ったころからお互いに飾らない自分でいられたという井上さんご夫妻。3人の子どもさんをはじめ、周りの人から愛される〝いい夫婦〟です。お二人の人柄だからこそだと、納得。
結婚するのは「この人」と思える出会いから始まって
―お二人の出会いと、お互いの第一印象は。
優 神戸JC(神戸青年会議所)に入って2、3年たったころ、先輩が「紹介したいお嬢さんがいる」と春のファミリー運動会に彼女を誘い、連れて来てくれたのが出会いでした。その日は送って帰っただけでしたが、後日連絡をして会うことになりました。私は28歳でしたから、それまでにも紹介してくださる方がいて会ってみた人もいたのですが、女性にはすごく気を使ってしまって(笑)。ところが彼女といるとなぜか自然で、「結婚するのはこの人」と思えたんです。
弘子 私は何も知らずに誘われて運動会に行っただけだったので普通に言葉を交わして、「落ち着いた感じの人だな」という印象だったかな…。その後、何度か会って。私は「自分自身を飾らないでいたい」といつも思っていましたので、主人はそんな風に居させてくれる人だったのだと思います。
―プロポーズは。
優 どんな言葉だったかは覚えていないのですが、私は初めから結婚を考えていましたので意思を確認するという感じでしたね。彼女は6歳年下ですから、これからやりたいことがあるだろうし、結婚の意思がないのならずっと引っ張っていては気の毒だし、断ってくれたらいいと思っていました。
弘子 私はすぐに結婚とまでは思っていませんでしたが、断るという気持ちは全くなかったですね。
―そして結婚式、新婚旅行へ?
優 4月に出会って翌年5月には結婚式でした。仕事上、長期間の休みを取るのは今後難しいだろうと、新婚旅行は10日間ほどフランスとイタリアへ。最初で最後の海外旅行、最後ではないかな(笑)。
弘子 それからすぐに長女が生まれ、長男、次男と家族が増え、旅行といえば、夕方家を出て、有馬温泉や淡路島へ走り、翌朝一番に帰ってくる。そんな弾丸ツアーばかり(笑)。
優 職場と家庭が同じ場所ですから、家にいるとゆっくりできないので出かけるのですが、仕事のことがやはり気になって。何かあったらすぐに帰って来られるところばかりです。
22年間、たった一つだけ忘れられないのは〝桃事件〟
―一般的な勤め人とは違う家にお嫁に行くことに不安はなかったのですか。
弘子 出会ったころは主人の仕事のことを一切聞くこともなく、何も考えていませんでした。両親は心配していたのですが、彼に会って話をしているうちにその人柄を知って安心したようです。
―新婚旅行から帰って来てすぐ、忙しい日常が始まったのですね。
優 平成9年、震災の2年後でしたので、被害を受けた本殿や鳥居、社務所、住居の一部も建て替えをする時期で、全てが完成し、復興行事が終わるまでずっとバタバタしている上に、JCの役も務めたりして…。次男が中学に入ったころからちょっと余裕が持てるようになり、このごろやっと落ち着いたと思えるようになりました。
―慣れない環境で子育てや家事、大変だなと思ったことは。
弘子 初めは土日が休みだったらいいのにと思ったこともありましたが、考えようによっては、混んでいない平日にいろんな所へ出かけられていいかなと。生まれた時からこの環境にいる子どもたちのほうが私よりずっと慣れていて、夏休みにどこかへ連れて行ってなどとせがむこともなく、忙しい時期には早く帰って来て助けてくれています。主人も用事を頼むと、嫌な顔もせず出来るだけのことをやってくれますし…。
優 家族それぞれがマイペースで淡々と過ごしているという感じです。
―まるで赤い糸で結ばれたようなお二人ですね。けんかをすることはないのですか。
弘子 些細なことでけんかをしても忘れてしまいます。あ、一回だけ、桃…。
優 あー、桃(笑)。
弘子 長女がまだ0歳のころ、ずっと抱っこして、やっと眠ってくれたので下におろした、その瞬間!主人が「桃、むいて」と。「えっ?!桃!」と、さすがにその時だけはお断りしました。それ以来、主人のために桃だけはむかないと決めました。ご自分でどうぞ。
優 いまだにむいてくれません(笑)。家事全般、ほとんど任せているのですが、桃だけは自分でむきます。
たくさんのことを教えてくれる、いい人たちに囲まれて
―今改めて、お互いに感謝するところは。
優 神社は宮司だけの力でやっていけるものではなく、総代さん方にお手伝いいただいています。この近くにお住いの方も皆さん、気持ちよく協力くださってありがたいことです。彼女は総代さん方や近隣の方ともいいお付き合いをしてくれて、助かっています。「奥さんがしっかりしているからやっていけてるんやで」とよく言われます(笑)。家業は奥さん次第といいますからね。
弘子 何も分からないままにこの家に来ましたので、いろいろな方からたくさんのことを教えていただき、私は周りの方に恵まれているなあと思っています。何よりも蛭子神社のことを大事に思う、主人の仕事に対する姿勢はすごく尊敬できるところですし、子どもたちにも伝わっていると思います。
―ゆっくりできるようになったらお二人で行ってみたいところは。
弘子 主人が「良かったよ」と言っている屋久島は行ってみたいかな。
優 日本中の霊験あらたかな場所を歩いて巡ってみたいですね。
弘子 私は歩くのは遠慮して、新幹線で追いかけます(笑)。
―行く方法は違っても目的地は一緒。これからもずっと仲良しですね。